日本文学の英訳からこの点(音の美学)を感じられるかどうか、確かめてみたくなった。
それで散歩がてら新宿の紀伊國屋書店に行ってみた。
思ったより品揃えが悪く、悩んだあげく洋書は買わずに帰って来た。丸善にしとけばよかったかな。ネット書店のせいかどんどん品揃えが悪くなる。
売り場で芥川賞の『推し、燃ゆ』英訳ペーパーバックを見かけた。タイトルは"Idol, Burning"となっていた。推し=idol(アイドル、偶像)かというと、ちょっと違うようにも感じる。日本語が内包している意味が、不足しているように思う。
今日は地元でも祭の二日目だったが、熊野神社も例大祭で路上に屋台が出ていた。
これでまた色々と考えさせられたので、よかったと思う。
おすすめの本を聞かれたときに、好みのほかにどの程度相手が読みたいと思っているか、興味の度合いを推しはかることは大事だと思う。
それにプラスして、本人のマインドセットや人生観などがどういうものなのか知りたいように思った。
読む本の選択は、その人がどういう人間でありたいかということの反映でもあると思う。これは老若男女に言えると考えている。
"You are what you read."という言葉は読書好きの間でよく使われる。
それだけでなく、"What you read is you DECIDING what kind of person you want to be."という風に思う。
洋書フロアの日本文学陳列棚の前で吟味している最中、外国人観光客に話しかけられた。20代とみられ、ドイツから来たという。
日本に来たので何か日本文学を読みたい。フィクションでおすすめはあるかとのことだった。
現代文学なのか古典なのか聞くとあまり古いと難しいかもという返答だった。次に好みはplot-drivenなのか、散文的なのか質問したところ、どっちも好きだがどちらかと言えばplot-drivenがいいという。外国人に人気のある作家がいいのか、こだわらないかではこだわらないと。
というわけで現代文学初期作品として、漱石の『こころ』、芥川龍之介と樋口一葉の作品集を勧めておいた。
彼は明治時代については若干知識があるようだったが漱石も芥川も一葉も初めて聞いたそうだ。一人は現在五千円札だと言ったら財布を取り出し確認して驚いていた。
その後ちょっと会話した。男性作家二人は西洋の影響を強く受けている。漱石は旧千円札/英国留学し評論も有名/陳列棚にはないが『吾が輩は猫である』は人間、社会や日本の西洋化に対する高踏派としての目が反映されている-こと、芥川はプロットや文体を細部まで練る性分/夭逝(一葉も)/英文学翻訳にも携わったこと
-などを話した。
結局こころ、芥川短編集とHearnの日本紀行文を買っていった。