新しいものを表示

 卒業してからの約束を取り付けられたのだと気が付いた時にはその背中は体育館のほうに向かっていて、俺の赤くなった顔は見られずに済んだ。

(終)

 ホワイトデーに三井サンからすげーセンスのいいクッキー缶のお返しを受け取ったアンナは、「あたしこれから毎年みっちゃんにチョコあげるね!」と来年以降の約束を取り付けていた。

 

スレッドを表示

 そしてそのチョコを三井サンにいざ渡そうとした時にこの流れをどうまとめて説明したものかと悩んだ結果、なんか俺が告白しそうな雰囲気を醸し出してしまったわけだ。

「いや、いやいやいや、違いますよ!アンナからの義理の本命チョコっす!」
 俺が慌てて昨日のこと意を説明すると、
「そっかー、アンナちゃんからか。」
 三井サンは残念そうな顔をちょっとしてから「ありがとう。」と言ってチョコを受け取った。
 
 はい、ちょっと待って。残念そうなって何?俺が勝手にそう思ったんだけど、ここで残念がる何かがありましたっけ?
 どうも俺は三井サンのことになるとどこかおかしい。おかしい理由にうっすら気が付いてはいるがまだ目を背けていたい。
 もうすぐ三井サンは卒業しちゃうけど…。

「さ、部活部活!練習しましょ!」俺はいつものようになんでもない顔でそう切り替えた。そもそも推薦で大学入学をもぎ取った三井サンが卒業までの忙しい中で練習に顔を出してくれているのだ。時間を無駄にはできない。
「おーし、練習練習!この三井のスリーポイントシュートの極意を早く習得してもらわんとな!」
 三井サンもいつもの調子でそう言ったかと思うと、
「三月一四日はお返ししに行くから、しっかり予定はあけとけよ!」
 にかっと眩しい笑顔を俺に向けた。
 

スレッドを表示

 いつもならここで終わりなのだがアンナはもう一つ、今度はもう少し洒落た包みのチョコを出してきて、
「これはね、みっちゃんに渡して欲しいんだ。」などと言った。
 みっちゃんとは三井サンのことで一度うちにやってきたことがある三井サンにアンナは秒で懐いてみっちゃん呼びが定着している。
 三井サンと俺との間にあったあれこれはまだ家族には話していないのでアンナにとって三井サンは気さくでイケメンの、兄のバスケ部の先輩という立場の人だ。
「え、ちょっアンナ、まさかお前三井サンのことが?!」
 好きなの、とはなぜか言葉にできなかった。だが妹は即座に「ちがうよ〜。」と否定してきた。どうやら友達が本命に渡すためのチョコを選ぶのに同行してお店で眺めているうちにその雰囲気に当てられて良い感じの本命チョコを買ってしまったという。買ったはいいが、渡す相手はいない。俺に渡すのは勿体無いし自分で食べるのもちょっと違う。
「でね、みっちゃんならあたしも『本命チョコあげちゃったー』って気分も味わえるし、でも本気にはしないで受け取ってくれるでしょ?」ちょうど良い感じの相手なんだよねー、みっちゃん。と実に気楽な返事が返ってきたのだった。

スレッドを表示

『ざわつく心臓』 

 二月十四日の放課後、部活の始まる前に「ちょっといいですか?」と声をかけ、可愛らしくリボンのかけられた箱を手にしながら言葉を選ぶ素振りをしていたら、そりゃあこう言いたくなるよね。
「えーっと、宮城…俺今からお前に告られようとしてる?」
 うん、三井サンは悪くないです。でもちょっと心臓がざわつくから、頬を染めたりしないで、誤解だから。

 ことの発端は前日にまで遡る。バレンタインデーにそわそわわくわくしない男子はいないだろうが(いやモテる男は別だな。流川がバレンタインに浮かれる姿は想像できねぇ)そこは女子も同じだろう。我が家の女子中学生アンナも例外ではない。しかし今までのところアンナに好きな人ができたという話は聞いたことがなく、友達とこの世間の浮かれた空気に乗っかって楽しみたいだけのようだ。
「はいリョーちゃん、これ、明日やっちゃんに渡してね。リョーちゃんの分は明日ね。」
 そう言って渡されたのはいかにも義理チョコというやつで、やっちゃんとはヤスのことである。アンナは毎年兄の唯一の親友であるヤスにチョコを渡している。兄をよろしくという意味らしい。そしてヤスは良いやつなのでちゃんとホワイトデーにはお返しをくれるのでアンナはすっかり味を占めてしまっている。

「これもノーカンっすか?」
俺の問いに、
「おお、ノーカンだな。」とケロッとした顔で答えた。マジか。(ここで堀田さん達がまた何やら叫んでいたがちょっと省略)
「ノーカンだけど、なんでお前にいまされてんのかはちょっと不思議なんだが?」
 三井サンの台詞に俺だって自分でも何やってんだと思った。なんで三井サンに…
「あーーーーーーっ!!!」
俺は大声で叫びながら地面に突っ伏した。いや、ちょっと待って、待って信じらんない。俺はなんでファーストキスを三井サンなんかにしちゃったの!?死にたい、ここから消えたいっ!!
 俺の言葉に堀田さん達は今度は大爆笑し始める。くそー、笑うなら笑えよ。ファーストキスは彩ちゃんとと決めてたのに(付き合ってもいないけど)なんでよりにもよってこの人にしちゃったんだよ俺!
 そんな俺の肩を叩きながら三井サンは、
「ほら、こんな時こそ男相手はノーカンの法則だぜ。」
と言って、がははと笑った。
 この時ほど三井サンの鋼のメンタルが羨ましいと思ったことはなかった。

スレッドを表示

「いやいやアンタ、グレてた時に何してたの?」
悔しいが顔がいいことは認めざるを得ないこの先輩がグレているときに女関係で色々あったとしてもおかしくないと思っていたのだがそうではないらしい。
「うるせーな!徳男達と遊んでる方が楽しかったんだよ!」
三井サンの言葉に堀田さん達が、三っちゃーん!と野太い歓喜の声を上げるので、
「ま、アンタは女より男にモテてるもんなぁー。」と笑ってやった。
「モテてねーわ!男とのキスなんてノーカンだからな!」
 突然の爆弾発言に屋上の空気が凍った。
「待って、三っちゃん、そんな話初めて聞くけど!?」と泣きながら詰め寄る堀田さん達を押し退けて、「マジで男とはあるの?」と興味津々で俺は尋ねた。
「グレ始めた頃とかちょいちょいあったなー。完全にナメられてたし揶揄われてたんだな。」
 三井サンは本当になんでもないことのようにそう言った。時々感じるがこの人の感覚はちょっとズレてるとこがある。それとも虚勢なのか。俺はちょっと確かめたくなって、頭突きをかましたことのある三井サンのその口に、ちゅっと口付けてしまった。

スレッドを表示

『何やってんだか』

「え、三井サン、あんた童貞どころかキスすらしたことないの?」
 何の話からそうなったのか、屋上で俺は驚きの声をあげた。

 売店で買ったパンを持って屋上に上がる。いつもならヤスととる昼飯だが今日は家の用事で休みなので一人だった。天気のいい屋上は人気の場所だと思うかもしれないが、ここ湘北では違う。なぜなら、
「あ、宮城じゃねーか。」
屋上に上がった途端ガラの悪い連中がこちらを睨んでくるからだ。3年生の堀田さんをはじめとする不良グループが屋上にたむろしていたり、生意気な生徒を囲んだり(されたのは俺だが)してるのでほとんどの生徒は寄り付かない。まぁ今は色々あって悪いことはしていないがガラの悪さとイキリ具合は相変わらずなので普通の生徒はそんな変化を知りはしない。
「おう宮城、珍しいな。ここで昼飯か?」
そんな不良どもの真ん中に相変わらずでーんと居座って弁当を食っているのがバスケ部に戻ってきた三井サンだ。
「まぁね。ここ、いいっすか?」
一応断りを入れつつ三井サンの隣に座る。
色々と、本当に色々とあったのに並んで飯を食うようになるなんて変な感じだがそんなに悪くもない。そして色々話しているうちに冒頭の台詞にたどり着いたわけだ。

「いや俺ら高校生なんだから悩むなら手を繋ぎたいとか、デートどこに誘ったら喜んでもらえるかとか、どのタイミングでキスしてもいいのかってとこで悩みてーよ!」「確かに!」…「「試しに…キスしてみよっか?」」
「俺ら何の躊躇もなくチューしてんじゃん!」「うわぁ、チューすげぇ気持ちー!」

悩むくらいならとりあえず体の付き合いからやってみるかと何となくしばらくうまくいくけどそのうち「体目当てなのでは」とか何とかまた喧嘩して欲しい。
よく事情を飲み込んではいない花道あたりに、リョーちんもミッチーも考えすぎなんだよ!考えるな感じろ!だろうがよ!」とか言ってもらいたい。

スレッドを表示

告白して相手が応えてくれたとして、それは自分に対する過去の負い目からただ拒否できないだけじゃないのか、おまけにその罪悪感を呼び起こす本人がいつまでも側にいるのはキツくない?宮城リョータ VS

あれだけのことをしておきながらバスケ以上を望むなどおこがましい、宮城からパスを貰えるだけで十分すぎる上に、諦めの悪い男ゆえにどうしても諦めざるを得ないもの手の届かないものには無意識に最初から欲しないようになってる三井寿、ネガティブ対決!始まらない恋物語!!

そのうちものすごい喧嘩をして本音吐き出しまくって、アンタの気持ち重すぎるわ!いやそっちこそ激オモ過ぎて引くわ!とかギャーギャーやりあってちょっとずつ相手との距離を測ってって欲しい。

なんか基地のイベントでサンタコスするコリファリ。コ(可愛い!)ファ(可愛い…)
モブ「コリンズみたいなサンタ来ても真男にしか思えない」
モブ「ファリアはあれか?今から殴り込みに行くのか?真っ赤な衣装は返り血が目立たない的な…」
コリファリ「「解せぬ!!」」

コリンズくんもファリアさんもちょっとせっかちなので、ゆで卵や茹でたじゃがいもを剥くとき冷めるまで待てないで毎回火傷しそうになってほしい。食卓に登る前に数も減ってほしい(それを見越して多めに作るよファリアさんは)

そんな日々はだが長く続かず、彼に貰い手ができた。ここでずっと暮らすよりちゃんとした家があったほうがいいとファリアは積極的に貰い手を探すがお別れの時は寂しそうである。俺が「幸せにね」と頭を撫でると彼は鼻を鳴らして、なんどもこっちを振り返りながら新しい家族とともに去っていった。

勝手にライバル視していた所為か、流石にちょっと寂しいなと思っていたらファリアが「元気を出せよ」と肩を叩いた。いやそれは俺がファリアに言う台詞だよと言う前に、あいつはお前に懐いていたからなぁと呟いた。
え?っと返せば、子犬の頃にお前が世話したからあいつはお前が大好きだったよと言う。

ああそうか、あいつはファリアに呼ばれたから走ってきたんじゃなくて俺が来るからあんな顔して俺を見てたのか。知ってたらもっといっぱい撫でて遊んだのに。でも知ってたらもっと寂しくなってたんだろうと思う。
俺はもう見えない姿に、幸せになるんだよと心の中でもう一度呟いた。

スレッドを表示

ファリアが酷く弱った子犬を拾ってきた。病弱なその子犬は何度も死にそうになりながらもファリアと俺が頑張って世話した甲斐あって成犬になる頃には見違えるほど元気な犬になった。ファリアはそれをとても喜んでいたし俺だって嬉しかった。だが一つ問題がある。

「コリンズ!」ファリアの俺を呼ぶ声が聞こえた。俺はダッと駆け出してファリアの元に行くが、俺より先にそいつがちゃっかりファリアの側で尻尾を振って座っている。
「なんでお前が先にいるんだよ!」俺の抗議などお構いなしだ。そう、こいつは何故かファリアが俺の名を呼ぶと、

自分が呼ばれたかのようにやってくる。俺より遠くにいても素早く走ってくる。本当の名前を呼んでも走ってくるから自分の名前をコリンズと思ってるわけではないようだ。ファリアの横でこちらを見上げるその顔がなんだか得意げで、俺はなんだか勝負に負けてるようで悔しいったらありゃしない。

犬と一緒に雪の中に駆け出して行ったファリアが、寒いと言いながら戻ってくるであろう時間を計算して暖炉に薪を足しお湯を沸かす。ブランデーたっぷりの紅茶を飲みながら暖かくなったらあの花を植えようかなどとたわいのない話をする。これは絶対この先ファリアと迎える未来の話だ。

コリンズ「ファリアが隊長が理想って知ってるけど俺もあと5年…いや10年したら隊長みたい格好良い男になるので待ってて!」
ファリア「…って言ってたよな?」
コ「理想と現実は違うよね…」
ファ「大事なのはそこじゃない。俺は待ったぞ。言うことはないのか?」
コ「結婚して!」
ファ「するとも!」

『理想と現実』 コリファリ

お題.comさんからお題お借りしました。

コリンズ「よしファリア、どっちが『待ってろよ俺の白兎』が上手くいえるか勝負しよ!」
ファリア「唐突だな。その手の台詞は最後に来た隊長に全て持っていかれるパターンだぞ、俺の白兎」
コ「さらっと混ぜてきたな、俺のファリア!じゃなかった白兎!」
隊長(私の出番はいらないね、私の白兎たち)

ファリアが笑うとあまりの可愛らしさに天使が拐いにきそうでその前に俺がどこかに隠してしまいたいくらい。
コリンズは笑うと世界中の犬の可愛いところを一つに集めたみたいで独り占めしてるのが勿体無くて誰かれに自慢したくなるんです。
同じ日に私の可愛い子たちから似たようなことを聞かされた。

私は二人が笑っているだけで世界はとても美しいと感じられる。彼らがいつまでも変わりなくありますようにと願わずにいられない。

『笑顔が好き』

お題.comさんからお題お借りしました。

コリンズからは何度も好きだと言われた。冗談と本気とを無邪気さでカモフラージュした巧妙な愛情表現は心地良くいつのまにか自分にとって必要不可欠なものになっていた。反面、俺からコリンズにも同じようにそれを返せていただろうか。言葉なく通じ合える相手とばかりいたせいで俺は何時も言葉不足だ。

『好きと言えなくて』 コリファリ

お題.comさんからお題お借りしました。

コリンズ「俺は妖精の存在なんて信じてなかったんだけどファリアと初めて会ったときに、妖精はここにいたんだと思ったんだよ!」
ファリア「コリンズ、悪いのは目か頭かどっちだ?」
隊長「ファリア、もう少し言葉を選んであげなさい。それから私もコリンズの意見に賛成だよ」
ファ「え?」

キスしても良い?と聞いたらファリアが頷いたので唇にそっと触れた。両想いだけどまだ恋人未満の状態だ。これくらいのキスで正解だろうかと思っていたらおもむろにファリアの大きな手で口を塞がれる。これはダメだったってことかと思ったら、ぐっと顔が近付いて手の平越しにキスされる。

「次はもっと本気で来い」
ファリアの言葉にブワッと顔が赤くなる。触れ合ってないのになんてドキドキするキスなんだろう!だからファリアは侮れない。

『完全ノックアウト』 コリファリ

お題.comさんからお題お借りしました。

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。