私の感受性の一番強い時に刺さったまま忘れられないのが『十四歳のエンゲージ』のルーと多恵子なんだけど、この組み合わせは弥恵と弘隆、クエスとハサウェイにもつながっていく。家庭の愛情に飢えた子と、家庭に恵まれた〝いい子〟。前者は自分の孤独を自力で埋め合わせる術を身につけて生きてきたので、人を惹きつける魅力があるのだけど、近づいてみると振り回されて後者の手には負えない。前者が他人も自分も傷つけるのは、どうしようもなく助けを求めてもがいているからで、後者は助けたいと思うけど、経験も少ない子供には何もできない。
これらの3組、ルーも、弥恵もクェスも亡くなってしまう。3人に共通するのは〝いい子〟にこちら側に来ないようにと一線を引くところ。めちゃくちゃ傷つけながらも相手のことを大事に思ってるのだろう。弥恵は自分のクスリ体験をあけっぴろげに語るのだけど、妹や弘隆には絶対にクスリをさせなかった。なまじ分別があるが故に、自分が〝いい子〟の側にいけないと思い知って(それも思い込みなのかもしれないが)絶望している。私は子供の頃、多恵子を自分に重ねてルーのことを思って(実際にそんな知り合いはいなかったけど)、それで弥恵やクェスのことも考え続けている。