「シネマの男 父なき時代のファーザーシップ」第12回は、ジョン・フォード監督の名作『わが谷は緑なりき』(1941)を取り上げてます。時代の波の中で徐々に崩壊していく炭坑の村の大家族、その中心だった”古い”父の姿を、これほど味わい深く見せてくれる作品を他に知りません。これ以降数多描かれる父親像の原型と言ってもいいのではないでしょうか。
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現代的視点から見ると、フォード監督の人間観には一種の「保守性」が潜在していますが、むしろそれが、ポリコレ的配慮の行き届いたハリウッド映画の多い中では、今や貴重な美質として伝わってくるように私は思います。
ところで、昔のビデオのジャケットを見ると、モーリン・オハラとウォルター・ピジョンがクローズアップされていて「恋愛ものか」と思ってしまいますが、恋愛はドラマの一部ですね。
引きのあるビジュアルとして、見栄えの良いこの二人を全面に出したのでしょう。オハラ、この時まだ二十歳くらいですが、すごく大人っぽい。
ウォルター・ピジョンの演じるグリュフィド牧師が、なかなか興味深い人物造形です。良心と誠実さを体現しつつも、諸々の現実には力及ばず、女性の情熱にも応えられない。