レカペ4(#レカペ2312)参加します! H:あ5です。運が良ければバニーちゃんAU本を新刊受付致します。恐らく開始時には間に合いません。どうぞよろしくお願いいたします!
ルスハン 2.序章(完)
え、ちょっと待ってくれよ。違う。えぇとだから。膝の上で緩く握った右の掌が汗で濡れている。顔からも変な汗が噴き出している気がした。
ボブとなす術もなく見つめあっていると、フッとイケメン風に笑った彼が、
「ヤリチンは、最低じゃないかな…」
と静かに言って、ポン、と俺の肩を叩いた。そして二人は去っていった。両手で顔を抱えて受けているショックが何だったのかを遅ればせながら解析し始めようとしたところで、
「おい、やめとけよ」
「いやだって!我慢できないだろこんなの!お前ボブに告白して振られたってことだろ…お前がヤリチンなのは確かだけど…!」
止めようとするペイバックを振り切ってワーワーと例の妄想モードでペイバックが早口で捲し立てる。
「すまん、一人にしてくれるか」
となんとかいうと、名残惜しそうにするペイバックがファンボーイを引きずっていった。えっと、俺ってボブが好きなんだっけ?
違います。俺が「好き…(はぁと)」なのは、ジェイク・「ハングマン」・セレシンであり、ヤリてぇかヤリたくねぇかで言うとメチャクチャにヤリてぇ気がする…けど。多分、そういうことじゃなくて。
俺はソファにバッタリと横に倒れる。目を瞑って「好き…」と呟いて目を開けると。出入り口に処刑人が立ち尽くしていた。
完
ルスハン 2.序章(続)
ちょっと凄みを効かせるように俺を見やったフェニックスに、意外すぎて俺は何も言えず、まじまじと彼女を見やる。隣でベトベトの指を軽く舐めたボブがぺろりとそのまま己の唇を舐め、
「ハングとフェニックスは結構仲良いんだ。君って、二人とは僕よりずっと長い付き合いなのに、何も見てないんだね?」
淡々と感想を溢した。エッ?!と思っていると、フェニックスはチロとボブに視線をやる。ボブがごめん?ダメだった?みたいな顔を返すと、フェニックスが軽い溜息を吐いて額に手をかけた。
「まあいい。確かにアイツとは色々考え方が合わないとこもあるけど、……つまり、友達なの。だから、アンタみたいなヤリチンと関わってほしくない」
「や、ヤリチン?!」
部屋の対角線で…以下略。ボブは紙袋の中身を食べ終わったらしく、寂しそうに中を覗いて、それから紙袋を小さく丸めた。そして腰を上げる。続いてフェニックスも腰を上げた。前に立つ二人を見上げる。
フェニックスはちょっと困り顔で、
「何その顔?本気じゃないでしょ?」
とやや唇を突き出す。…そんな顔もするんだなお前…可愛いな…じゃなくて。
「あ…?え?…うん…」
曖昧に何か音を発する俺に、ボブは眼鏡越しに明らかな侮蔑の冷たい眼差しを寄越す。
ルスハン 2.序章(続)
「でもミッションの前からエロい目で見てたのは見てたと思うよ…?まあ今みたいに『好き…(はぁと)』みたいなのより、『犯すぞ、この野郎』みたいな感じだったけどね」
ボブはまたジュルジュルと何かを啜る。そして抱えていた紙袋に手を突っ込んでポリポリと齧る。ボブが食ってるとなんでも美味そうに見えてくる…。いや、そうじゃねぇだろう。なんだって?
「犯すぞ、この野郎??」
俺が聞き返すと、部屋の反対側で楽しそうにいちゃついていたファンボーイとペイバックが突然ビクッと固まって、即座に何もなかったかのようにさっきの続きに戻った。
ボブは紙袋に手を突っ込んで取り出したチップスをもぐもぐやってからチロ、とファンボーイの方に目をやり、再び紙袋に手を突っ込んで、
「自覚がなかったとは知らなかったけど、まあ今は少なくとも自覚があるならいいんじゃないの?」
と言った。フェニックスはずっと肩を揺らして音なく爆笑している。
「好き…(はぁと)…って」
俺は呻いて天を仰いだ。また部屋の対角線上の二人がビクッとした気がしたが、シカトする。
「ま、本気じゃないんでしょうけど。アイツは同僚なんだし、下手なこと考えないことね?」
ルスハン 2.序章
それは奇妙な幕開けだった。出会ってそれなりに相手を知っているという状態で十年かそこら、何も起こらず。寧ろどちらかというと険悪な関係だった。それが、突然。どうしてこうなった?
ハングを目で追うようになった。意識的なものじゃないからややこしい。「こう」なって、たった二日で不死鳥は目敏く異変に気づいた。
「どうしたのアンタ。このところずっと『その調子』じゃん?」
嘲るようなニュアンスが含まれているのは気のせいじゃないだろう。わかる。逆の立場なら俺もそんな調子で言うだろう。趣味が悪いんだなとかなんとか。俺は片手で顔を覆った。
「そんなに分かりやすいか?」
「まあねぇ。どう?」
いつの間に近くに来たのか、あるいは最初からフェニックスと一緒に居たのか知らないが、彼女が顎を向けた先にはボブが居た。
「まあ分かりやすいんじゃない?二日前くらいから?」
しれっと正確すぎてゾッとさせる男だ。娯楽室で俺達は三人並んで座っていた。さっきまでハングがコヨーテとビリヤードをしており、何か飲み物を取って二人で談笑しながら出て行った。俺は雑誌に何となく目を通していただけで、ハングを見ているつもりはなかったのだが。…ただ何となく『エロ…』と過って、その時、自分がアイツをガン見していることに気づいたのだった。
ルスハン 1.奇蹟 (完)
去ろうとする彼の腕を捕まえて、
「待てよ」
引き止めると、思いがけず顔が近かった。けれどもこれはいつもの彼の間合いでもある。とにかくコイツは顔の距離が近くて……だからいつも酷くイラついた。ノンケに無遠慮に距離を詰められて不快に思う事はよくある。だが、コイツは格別にヤバかった。なので俺が彼に居心地悪そうに顔を顰められる筋合いはない。俺は今まで、逆の立場で耐えてきたんだし。
「確かに現時点で俺とお前の友情も人間関係も先行きは不安だ。だが、俺はちゃんと礼がしたいって言っただけで、友達になろうと言ったわ……!?」
訳じゃない、と言おうとして、眼前のドヤ顔が唐突に、今にも泣き出しそうに歪んだ。驚いて口を噤む。ミッションから生還したあの甲板で、ハングマンも可愛い顔もするんだなと確かに思ったが。これは。
「え?友達になりたいの?何だ、その顔?」
キュッと結んだ唇をプルプルと戦慄かせてから、
「なりたい訳、ねぇだろ…」
かの鳴くような声がそう言った……気がした。
言っておくが、俺は一度もそういう目でハングを見たことなんかなかった。
確かに長い付き合いだった。けれども、ただの一度も、だ。
プルプル唇を震わせて泣き出しそうな諦め顔で、お前がそんな事を言う、この瞬間までは。
終
ルスハン 1.奇蹟 (続)
「えぇと」
無意味語で間を繋ごうとしたら彼は漸く振り返った。それも結構勢いよく。にぃっ、と例の如く態とらしく笑んで、腕を組んで見せる。着替えは私服だったようで、彼はジーンズにグレーのタンクトップ。身体を逸らす彼の動きに合わせ、ドッグタグがチャラチャラと鳴る。
「おっとりノロマの雄鶏君。君が優秀で類稀なる才能を持った俺と、命を救い救われる仲となったことを口実に友達になりたいと思うのはごく自然な事だ。しかしな?これまで俺とお前はそれなりに時間を共にしてきた。友達になれるならもっとずっと前になっていたと思うだろ?……な?つまり俺たちに相性が悪いって事実は突然変わったりしない。今俺たちはいい感じだろ?だから、何もこの完璧な成功体験を、二人で台無しにしなくたっていいんだ。……な?わかったかい?」
カッカッカとやはり態とらしく笑いあげ、彼は腕を組んだままくるりと両足の踵を軸にターンした。まるで機械仕掛けの人形みたいだ。→
ルスハン 1.奇蹟 (続)
「俺は…お前が間に合わなかったら、今ここにいない。だから、すげぇ感謝してる。俺だけじゃない。マーヴもだ。知っての通り彼は俺の大切な家族だ。この任務は確かに幸運の積み重ねで。まさに奇蹟っつーか。そういう風に俺も思うが。けど、お前の不断の努力がなきゃ、間に合うものも間に合わなかった。だから奇蹟よりお前の実力に感謝したい。…救ってくれてありがとう。いつかちゃんと礼がしたい。ハングマン」
内容は本音だった。礼がしたいという話も切り出すタイミングを窺っていた。なのに俺の声は硬質で。人付き合いは苦手じゃない筈だが、ハングマン相手だと何故か決まってうまくいかない。その半分は俺のせいではなく、ハングのせいだろうと思う。今だって、彼は足を止めたものの、振り返りもせず俺の話を聞く。
コヨーテは中途半端に俺を振り返ってから、チロリとハングマンの横顔を見やり、彼の肩に躊躇いがちに手を置いた。
「あー、そういう話なら。俺は先に出ておく」
俺とハングのどっちに言ってるのか分からなかった。ただコヨーテはもう一度気遣わし気にハングマンの顔を覗き込み、励ますようにトントンと肩を叩いて出て行った。ハングはまだ振り返らない。俺は素っ裸で、所在なく片手を首裏に当てる。→
ルスハン 1.奇蹟
「奇蹟って言うのは、そう何度も起こるものじゃない。だから奇蹟って言うんだろ」
通りすがりに聞こえてきたのは、救世主の声だった。奇蹟の余韻に沸く船内で、けれどもそれはアイツらしくない静かな声だった。いつもの煽り声じゃなく、そんな声も出すんだなと思っていたら、案の定相手はコヨーテで。「お前がそう言うなら、いいけどな」 そう言って溜息を吐く。
そんな声も出すと言えば、甲板で手を握り合った時のハングは見たことのない顔をしていた。
盗み聞きは趣味じゃない。かと言って、シャワーを浴びたいと言う目的も遂げずに回れ右で帰るのも変だ。ちょっと迷ってから、 「あー、込み入った話か?俺もシャワー浴びたいんだが」 と声を掛けて中に入った。脱衣所で中途半端にタオルを被ったまま、二人は話し込んでいたようで。同時に気まずそうな顔を向ける。 その顔で何となく察する。俺の話をしていたんだと。しかも良くない話だ。 「そんな顔すんなよ。何も聞いてない。ボソボソ声がしたから、声掛けて入った方がいいかなと思っただけで」 軽く片手を振って続けろよと示したが、彼らは再び軽く顔を見合わせ、着替えの続きに戻る。なんとなく面白くない。 ロッカーに脱ぎ終えた服と持ってきたを突っ込んでから、仲良く揃って出ようとする彼らの背に声を掛ける。→
本日深夜0:00〜よろしくお願いします!!
年末進行ですが今日も僕は元気です。多分この後の仕事が日付超えるので展示はイベント開始時には間に合いません。でもめげずに仕事終わってから続きを書いてイベ中に上げたいと思ってます。本日深夜(明日0時)開始のルスアイオンリーwebイベのお品書きは隙間時間に仕上げて19時更新予定。
展示は(マヴェ+ルス)xアイの3Pです。ルス&マヴェが険悪な時期の話なので非常に二人の治安が悪いですがアイスだけはご満悦です。
イベント詳細 ⇒http://privatter.net/p/9983191
#RSIonly_1125
良い夫婦の日(金赤R18)
授業終わりに近づいてきて「君、名前は?」と尋ねた男に「知らん奴に名乗る必要が?」と返した。シカトして構堂を出ようとして腕を掴まれた。
男は如何にも人好きのするクシャリとした邪気のない笑顔で「ごめん。君の言う通りだ」と言って名乗った。そしてまた俺の名を尋ねた。
それ以来えらく懐かれ「君が好きだ」「付き合おう」等と当然のような顔で言ってきた。
金髪長身、真っ青な瞳の男は、俺が知らなかっただけで学内ではちょっとした有名人だと知ったのは、その男と寝るようになってから。とある大企業の御曹司だとか。
大学を卒業する頃までダラダラと関係は続き、そして男はやはり当然のような顔で言った。
「僕は卒業後、二年ほどで結婚する。君も祝ってくれるだろう」と。
俺を抱いた手は今は彼の首元でタイを締めている。夜会に出席しなければならないという話は聞いていた。
「祝ってやる。つまり今日でお前とのセックスも最後って訳だな」
咥え煙草で素っ裸のまま、曲がったタイを直してやると顎を引いた男が俺の髪に指を絡めて笑う。
「は、何の冗談だ?君と別れるとでも?」
唖然として見つめ返す俺に「期待して良い。僕は彼女の良き夫になり、君の良き愛人になる」と言って毛先にキスを落とした。
良い夫婦が聞いて呆れる。殴っておくべきだった。
スパイスはお好みで (ルスハン・R18)完結
「ハァ?」意味が分からねぇって感じのお前はやっぱり可愛かったので、「まぁまぁ」と取りなして指輪を買った。
「ハ、ハァァ?」とお前は赤くなったので、多分大丈夫。ターボをポチリとやって更にカッ飛ばす。
ほらな。気付けば高度15000M。地平線は丸みを帯び、地球は丸いと実感できる。
つまり俺達は同棲生活を始め、結婚の準備をしていた。
「…ちょっと待て。何かがおかしい」
「今更お前…俺のノロマが移ったのか?」
「俺がノロマな筈ねぇだろうが!」
「だよな。なら良かった。ここに素早く署名してくれ」
後は申請するだけだ。今のところ順調だが、俺達の事だ。小さな喧嘩は日常茶飯事、勘違いや考え方の相違で時に深刻な罵り合いもあるだろう。
けれどもお前が言う通り。目的意識がはっきりすれば、自ずと捨てるべきものは明確になる。例えば長年の経験で形作られた己の価値観すらも、時にはその対象になるのかも。そんな経験も俺達には良いスパイスになるだろう。
「俺さ。水中訓練の時にお前が唇真っ青でシャワーから出てきて『これで体調不良になったらお前の戦術が勝ちになっちまう』みてぇな事言った時、多分お前に堕ちた。馬鹿可愛くてさぁ!」
結果。申請する前から離婚の危機が訪れる事になったが、俺達は幸せである。完
恋は雨色 (ルスハン・R18)
「目的がはっきりすれば人生のノイズは自ずと排除され、只そこに至る道だけがくっきりと姿を現す」
昔そんな事を嘯くように言ったお前に、俺が思った事はと言えば『シンプルでいいよな、お前は』という恨み言。
けれども今ならお前の言った事がよく分かる。俺の人生を知らねぇ内に覆い尽くしていたらしいマーヴへの怒りと恨みは、共に空をかっ飛び、共に死にかけ、互いに命を救いあって。最後の最後はお前に二人揃って救われて。綺麗さっぱり心が晴れ渡った。不要なノイズを取っ払って見えたものは何だと思う?俺は恋をしてるという事実だ。笑わば笑え。
「二人で話したい」
雨上がりの草露のようなお前の瞳は唐突に曇った。そんな目をするな。急に自信が無くなってくるだろ。何せ俺は自分の人生を主体的にコントロールするようになって日が浅い。ずっとそうしてきたお前とはベテランとアマチュアの差があるんだぞ。
まぁいいさ。今回の件で俺は学んだ。どうすりゃいいって迷った時には、思い切りアクセルを踏み抜いちまえばいい。考えるな、動け。
この恋がたとえ大雨になっても、速度全開でかっ飛ばせば、その内、雲を抜ける。それでまたあの草露色を拝める。
ビビってる時こそ全速力。多分そういう事。
「なぁ、結婚しよう」
おっと、ちょっと踏みすぎたか。
花に嵐 (ルスハン・R18)
満開の盛りを迎えようとするアーモンドの花が、予報になかった強風で花吹雪を巻き起こし、無惨に散った。
要所要所でこういう不運は起こるものだ。つまり別離は突然に、時に劇的に最悪なタイミングでやってくる。
けれども。二分十五秒には及ぶまいが、俺なりの最速で首の皮一枚、雄鶏と狼の首を繋ぎ止める事に成功した。
つまりこのミッションにおいて嵐は辛うじて花を直撃せず、彼らは親愛の盛りを無事に迎える事ができた。
同じ海軍の飛行士という立場ながら、もう二度と交わらないだろうと思っていた雄鶏と俺の人生はこうして劇的に再び交錯する事になった。
当初は割と最悪な再会だと思っていたが、事態が収束を迎える頃には何故かチームの誰もが温かい気分になっていた。
それこそ花に嵐の喩えもある。今ある命を、この邂逅を愛おしむべしと、帰港後にはアレに乾杯コレに乾杯と今回のチームで杯を重ねた。
それで。
「よぉ、救世主。話がある」
陽気な声音に似合わぬ真剣な瞳。ごくりと喉が鳴った。
プログラム死が完全に機能し、髭の感触を記憶から拭い去ったのはつい最近だ。その上、お前に再会してからまた身体が疼いてるなんて事は知られる訳にはいかなかった。同じ轍を踏むのはごめんだ。
「二人で話したい」
なるほど。こっからが俺の花に嵐か。
君の為のアポトーシス (ルスハン・R18)
とは言え俺様は合理主義者だ。現実主義でもある。だから無駄な事なんかせず、順調に首席を取った。
何事もそうだが、目的がはっきりすれば自ずとノイズになるような感情も欲望もなりを顰めて行く。
自然と死ぬんだ。不要な部分が、システマティックに削ぎ落とされて、あたかも最初からそうプログラムされていた通りに死を迎える。
だから、きっと俺は雄鶏と寝た事も、目覚めて眼前にあった浅くない傷痕も、陽気で軽い身のこなしも、笑う時に掠れて鼻に抜けるような音も、ふとした瞬間に見せる根暗を極めた瞳も、無駄に柔かい唇と肌も、キスする時に掠めてウザい髭の感触も、綺麗さっぱり忘れるだろう。
どんなに美しく咲き誇った花も、やがて枝からぽろりと首を落とすように。途轍もないインパクトがあっても、俺の人生に不要なものは、いつか俺の人生から排除される。
これはお前の為でもあるんだぜ。お前だって、お前の人生に集中してる。俺はそのノイズになるつもりは毛頭ない。
ただ偶々今ここで重なった道が、この先分かれて二度と交わらない。
「お前所属は?」「リモア」「俺はオシアナ」「そうか」「あぁ」
またなと互いに言わないのは、互いの人生の機序に従って、互いの存在が排除されたから。自然の摂理だ。
さよなら、俺の雄鶏ちゃん。
願言(ねがいごと) (ルスハン・R18)
俺は何かに願掛けしたりしない。目標を立て、その実現の為に努力する方が願い事を星にかけるよりずっと合理的だからだ。実際、相応の努力という対価を支払い、欲しいものは全て手に入れてきた。全て…?まぁ、大概は。
それでも一つだけ、努力しても無駄に終わった、叶わぬ願望がある。
「雄鶏が安全マージンを取っ払って飛ぶ姿を見てみたい」というやつだ。
安全マージンは言わずもがな重要だ。重要だが、後一押しという場面でそこに食い込む必要がある時だって当然ある。お前はいつもそこで、気持ち悪ぃほど正確に、マニュアル通りに手を緩めた。
一方お前はセックスの時に、もうこれ以上はと思う限界を、いとも容易く突き破る。ゴリゴリと限界の限界を浅ましく追求してきて、まだ先があったのかと俺はいつも愕然としながら意識を投げ出す。限界性能を引き出すってのはそういう事だ。
俺はお前の限界が知りたい。限界の限界を超えたその先も。それで漸く俺の限界も更新される。これは確信だった。
今日も雄鶏は空を飛ぶ。安全マージンをきっちり残し、あの猛々しい真っ黒の瞳なんかお首にも出さず。
ふんにゃり笑って超音速でノンビリと。
全くもって反吐が出る。
クルクルと楊枝を端から端に回して仕事に戻った。何度見上げても無駄だ。
知ってる。
20↑腐。洋画民。一次創作色々。二次創作色々。フォロリクの際、プロフに年齢表記お願いします。
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