作中、平熱の定義が38℃に変更されるくだりがありまして、そうやって解釈をズラして解決したことにしてきた世界なんだな、と窺わせてきます。
そこが、科学とスピリチュアルを分ける一線なんじゃないのかと、わたしは信じていたいです。
「三十八度通り」は、生活が壊れていく一方の男の人の話。熱に浮かされてシュルレアリスム的な展開。身体的にしんどい。
「千羽びらき」は奪われてばかりの一生だった女の人の話。わたしは母から奪ってばかりでいないだろうかと、読むのつらかった。
「猫の舌と宇宙耳」は小学生たちが冒険する話。終末のジュブナイルって感じで好きだった。最後にうっすら提示される出口っぽいものも、無茶苦茶信用ならない感じがしました。
“「ごめんね。おかあさん、こんな病気になってしまって」
話についていけなくなると、とりあえず謝りたくなってしまう。
「だめじゃない、そんな波長の悪い言葉を使っちゃ。疒なんか取って、丙気って言わないと。そうすれば平気になってくるでしょう?」”
(第2話「千羽びらき」より)