この小説は、放哉の支援者たちの内心はほぼ描かれないのですが、こいつどうしようもねえな、でも生み出す句は素晴らしいんだよな、という支援者たちの気持ちが疑似体験できるのではないか、と思います。
最後まで手を差し伸べてくれる人たちは絶えず、でもその手を上手く受け取ることができなかった。
どうしようもないけれど、どうにもならなかったところに悲しさがあり。どうしようもないけれど、どうにかしようとしてくれた人がいたことに救いがあり。
そして、吉村昭のような自我の確立した人間が、放哉のようなどうしようもない人間を否定したまま共感を抱いて、こういう寄り添うような小説を書いてくれたことも救いだなと思いました。
小説の味わいとしては、意外に恬淡として淡い感じでした。