ハイチは独立後も、人種対立、南北分裂、強権的独裁政治、相次ぐ政変、プランテーションでの強制労働、アメリカからの占領と、苦難の歴史を歩みます。
ラテンアメリカ諸国が独立しアメリカと国交を結ぶ中、ハイチは国家としてアメリカから認められなかったというのは、とても酷いことだと感じました。
旧宗主国のフランスへ多額の賠償金を支払ってやっと独立国家として認められ、それがハイチの発展への重い負債となっていたことも、恥ずかしながら初めて知りました。
ハイチが「西半球の最貧国」なのは、「世界初の黒人共和国」なのにではなく、「西半球の最貧国」だからなのだと解説されています。
ハイチの独立は、人権宣言に見られるような欧州の啓蒙主義による恩恵ではなく、ハイチの黒人奴隷たちが自ら戦い自ら勝ち取った自由なのだと、本書は繰り返し繰り返し解いています。
といったように、わりと歴史の解釈にまで踏み込んで書かれている本ですが、ここまで踏み込んで解いてくれないとわたしは理解できていなかったと思うので、この本を読んで良かったと思いました。
いやまあ、ハイチはいつまで血を吐き、何度朝を乗り越えなければいけないのかと、思いますよね。
そういう世界の在り方は呪わしいし、わたしはそういう世界を構成している一部です。
一方で、ハイチは自らを自ら力で勝ち取ったのだと、そういう世界にわたし達は生きているのだと鼓舞してる、と思う。