けど、主人公の語りがこんな感じなんですよ。
「テヴィエの場合、不幸は一度で終わらず、次から次へと芋づる式ですからね。たとえば牡牛が死んだとしますよ、そしたら、皆さんには、こんなこと、無縁だといいのですが、一頭では済まないんですよ…… 神様が、世界をこんな風にお造りになったんです。ですから、いじくろうたって、いじれませんよ。やれやれってなもんです!」
この、悲惨なはずなのに悲惨さがいまいち伝わってこない語り口にペーソスを感じる。
「やれやれってなもんです!」という明るい諦観と、神の民であるという素朴で強烈な自負。この諦観と自負なくしては、おそらく頽れてしまうのだろうけれども。なんかえらいもんを読んだ。
「異教徒(ゴイ)がいくら背伸びしたって、ユダヤの人間にはかなわないんじゃないですか? 異教徒(ゴイ)は、しょせん、異教徒(ゴイ)ですし、あたしたちは、あたしたちです」