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プリーモ・レーヴィ『休戦』読了。
ソ連による絶滅収容所解放後、ユダヤ系イタリア人の作者が東へ東へ移送され、イタリアに帰国するまでの9ヶ月を書いた本。
終戦直後の混乱期の話はほとんど知らないので、この本を紹介してもらって良かった。

作者が見たもの、出会った人、感じたことを余すことなく書いて残しておこうとしているかの、記述が非常に細かい。ていうか、観察力と記憶力がすごいな。
書かれている物事は具体的なんだけど、書き方は比喩が多くて観念的。
びったり付いてる脚註での、固有名詞や符牒の解説は非常に助かりました。
脚注、とても助かったけれども、表現や内容の解釈にまで立ち入るのは如何なものかと思います。

登場人物のキャラクターが立っていて、スラップスティック・コメディ的な場面もちょくちょくあって、読んでいて面白かった。

アウシュヴィッツからポーランドへ移送される際、作者は、同じくアウシュヴィッツから解放されたギリシア人と会うのですが、このギリシア人も凄かったです。

ギリシア人のモルド・ナフムさん、ちょいちょい抜け出して闇市場で商売を始めるんですね。与えらるパンを待つのは忌まわしいことだと言って。
作者は、強制収容所で痛めつけられ、靴もなく、縦縞の囚人服を着て、病で伏せっている自分は、哀れまれて然るべき存在だと思っているのですが、モルド・ナフムさんに言わせると、それは怠け者だということだそうです。
靴が必要なのは分かりきっているのに、それを確保しないのは愚か者だ、とも(モルド・ナフムさんは収容所の倉庫に盗みに入ってた)。

モルド・ナフムさんの指揮の下、作者は病をおして闇市場で労働に勤しむことになるのですが、これが魂の回復に寄与してる感じがすごくあってですね。このくだりを読んでる時、「働けば自由になる」という標語が頭の中でずっとぐるぐるしてました。
モルト・ナフムさん曰く、人に言われて作業をするのは奴隷にすることであって、働いたことにはならないそうなので、そこんとこよろしく。

とりあえず、わたしは、この本を読んで
、たくさん歩けるスニーカーを買おうと思いました。

プリーモ・レーヴィ『休戦』は、著者が強制収容所に収監されている段階では出会うひとりひとりを克明に記憶に刻みつけようとしているのに比して、東へ移動させられるにつれ、その鮮明さが鈍っていってるのが興味深い。
村の映画祭を襲撃するソ連兵はモブだし、やっと帰った故国で会う人は背景同然で。

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