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『インヘリタンス』東京芸術劇場
面白かったけどいろいろ言いたいところが残る上演という感じ。致命的にダメなわけではないけど、細部の手の届いてなさは単なる未熟さではなく知識や理解が及んでいないからではないかと考えてしまう。そういう意味では新国のAiAの印象に近い。でも演出自体はオリジナルとの違いをちゃんと作れているのかなとも思う。(私は戯曲既読、ロンドン公演見れずですが、当時の写真や批評を見る限りでは)
やっぱ面白い戯曲だなと思った。ゲイ男性のみにフォーカスするところは全面的に乗れない部分もないではないんだけど(これは今回の上演とは別で、戯曲の話として)エイズの経験をどう現代で考えるかって部分のアクチュアリティは本当に上手い。ゲイとしての生の継承が家や場所(ウォルターのお屋敷だけじゃなくエリックの祖父母のアパートとかも)をモチーフに展開する部分は上演で見てクリアになった部分も大きい。
エリックが友人たちと政治の話をするシーンが好きで、政治や選挙が彼らの日常の一部としてちゃんとあるのが良いなと思う。ので、今回の上演でそこにたどたどしさが残るのは一番残念だった。
初日だし大長編だしとは思うけど、台詞嚙みすぎよ…。飛んだか?とヒヤッとする場面さえあったし…。

ゲイの登場人物が軒並み「おねえ」っぽい演技になってたの、いいのかなぁとは思いながら見た。難しいのは、この作品はベタな恋愛物語を確信犯的にやってるように思うからで、その意味でステレオタイプ的なものって単純に悪いとは言い切れない気がして。でも、コミカルなシーンになった時にあれ?と思うことは多く、笑いを作る上で踏み越えていいラインがあいまいになってる気はしたので、この演技は良しとしない方がいいのかもしれない。
俳優は正直ピンキリ。下手なのはもうしょうがないし下手な人ばっかりとも言わないけど、さすがに演技プランが共演者とちぐはぐなのでは?と感じる人はいた。ヘンリーとマーガレットで特にかみ合わなさを感じた。エリック役の福士さんは好演でした。
あとまぁ、これはイギリス版もそうだったっぽいので仕方ないのかもしれないけど、この話、美男子ばっか揃えないかんのですかね?こう少女漫画のようなキラキラキャスト感ってこの戯曲が求めるもののような気がしつつ、でもそういう華じゃないのが見たいんだよなぁと。これはそもそもの戯曲に感じる好みかもしれません。

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