昨夜出勤前に慌ただしく『真の人間になる(上)』を読了したせいで、勤務中ずっとハルムトとハイヌナンのことが頭から離れなかった
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b628107.html
しかし持ってきていた下巻は開けなかった、開いたら上巻で起こったことを引き受け、了承し、噛み砕き飲み下して前に進むことになってしまうから……
あらすじから期待していた以上にハルムト→ハイヌナンの片想いが物語の核になっていたためラブストーリーとして思い切り味わってしまったし、ブヌン族の、とりわけハルムトの自然へのまなざしの深さ、親密さに圧倒され、文章の美しさや湿度や息苦しくなるほどの甘さにうっとり耽溺するような最高の読書だったのだけど、上巻の舞台は日本統治下で皇民化政策が進む台湾で……物語を満喫する自分と、日本人であること、この国がいまだこんな歴史認識であることが呪わしくて恥ずかしくてたまらず、不勉強なまま呑気に生きてきたことに憤る自分とにつねに真っ二つに引き裂かれる心地だった でも当地の人々は真っ二つどころでは済まない思いを強いられたはずで……
下巻も歯を食いしばり涙しながら読む 必ず今年のベストに入る、もしかしたら今年これ以上の本には出会わないかも
細かい内容に触れているので伏せる 上巻の結末への言及はなし ハルムトとハイヌナンの間のことでたまらなかったところ
書き出したら文字数超過するくらいたくさんあるし、なんなら描写されたことすべてにいちいち食らったのだけど、
ハルムトが自分をどう見ているか察した上で、応えはしないがゆるし受け入れているハイヌナンがとてもよかった…残酷ではあるけど、拒まれたり距離変えられたりするよりは…想いを知っててメッセンジャー役させるのも、わざとだよね…ハルムトが複雑な気持ちになるのを喜んでいるハイヌナンもいたのでは…? 二人して昼寝し損ねている畳の上、たくさんの呼び名、活けられた野の花、電球の下での接近、優れたバッテリーだったこと、煙草をめぐるやりとり、なにもかも濃厚すぎて溺れるし、ときめきでいっぱいになるたびに、日本人の私にこの高まりを享受する資格はない……と凹む だけど違う舞台設定だったらよかったのにとは絶対思わない