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先日発売された馬伯庸『両京十五日』1巻には鄭和さんがちらっとだけ登場するのですけれども、そのせいか、ここしばらく気づくとついニコニコしてしまったりして、メンタルの底上げ効果がすごい。自分がハマっている史実(もしくは歴史もの)の人物が別の作品に出るだけでこんなに楽しくなるとは思わなかったし、三国志なんか関連作品がすごい量あるから、毎日ハッピーで健康に良いのではないだろうか。それとも作品数が多いと解釈違いとか多くなって、むしろストレスになったりするのかな。
ちなみに(これは別段ネタバレにはならないと思うので書きますが)、作中で鄭和さん「その人となりは忠直耿介」云々と評されていて、「…それは史実に根拠あるの…???出典があるなら教えてください!!!」になっていたところ、少なくとも「忠直」部分の出典は見つけたので、この喜びを共有させてください…!!朱瞻基(宣徳帝)が多分鄭和の7回目(最後)の航海の前に賜った詩、らしいです。『両京十五日』はその数年前が舞台だから厳密には史実の先取りかもだけど、まあ普通に考えて、そういう評価が確立していたんでしょうね。そうでないとあんな大金の動きまくる事業(しかも皇帝の目の届きにくい)をあんな沢山任せないだろうし…
(後でさんざん語るかもしれません)
📙「三宝太監西洋記」読書メモ:
体調が悪い間に馬歓の「瀛涯勝覧」の古里国(現コーリコード)の章を読み直して、ここだけで短編の二つ三つ余裕で書けそうな情報量…と唸っていた。現地の音楽にも言及あって、ひょうたんの殻で作った弦楽器があって耳傾けさせられる音律と言っているのだけれど、ヴィーナか、シタールか、タンプーラか…?と色々聴き比べたりしている。わからん。それはそれとして、「三宝太監西洋記」で古里国のこと何か書いていないかなと調べてみたら、「瀛涯勝覧」のひょうたん楽器のところなどを取り込んでいて、ほお、そう作りますかと思った。「三宝太監西洋記」の鄭元帥は「逆らうものは攻め滅ぼす!」メンタルの人なので、ここも明の大軍にびびった古里国王が宴会で一同をもてなす場面に化けてしまっているが…
(左が「瀛涯勝覧」、右が「三宝太監西洋記」の該当箇所です)
📚積読書:カマル・アブドゥッラ『欠落ある写本:デデ・コルクトの失われた書』(水声社)
タイムラインをどんぶらこと流れて来たのを見つけた。メインタイトルと、「デデ・コルクトの書」って確か東洋文庫に入ってなかったっけ題名だけは聞いた覚えがあるというのと、アゼルバイジャンの小説家というのに興味を惹かれて、帯のアオリに文字通りあおられて買った。オルハン・パムク(『わたしの名は紅』の)、イスマイル・カダレ(『誰がドルンチナを連れ戻したか』『夢宮殿』の)、ミロラド・パヴィチ、ウンベルト・エーコなどの名前を思い浮かべ、期待を高めている。いつ読むかはわからないが、自分の勘が当たっているといいな。
続き。「天灯」の構造のネタバレをするので一応伏せ。
成功しているかは別として、「天灯」の設計図はこんな感じで考えていました。中秋の夜の思い出話をBにするAの語りと、その後のどこかの時点で、Aの語りを踏まえつつ中秋の夜の出来事をモチーフにした食籠の図柄を第三者に語るBの語りが交互に来る構造で、Aの語りだけ読んでも、Bの語りだけ読んでも、ABを順に読んで行ってもそれぞれで話が通じるようになっている筈…!です。Aが呂颯でBが鄭和さん。
何でそういうややこしい構造にしたかと言うと、一つは呂颯が極めてプライベートな打ち明け話を始めてしまったので、その聞き手が必要になったこと、その際にアウティングみたいなことにはしたくないなと思ったこと。もう一つには、呂颯の語りを契機として鄭和さんが一人称の語りを獲得していく、みたいな話にしたかったから。現存する鄭和さん関係の碑文をはじめとする文章、とにかく個性が全然感じられなくて非常に歯痒い思いをしていたので、「いつも三人称ですかしてないで、たまには一人称で語ってみろよ」と。なので食籠の説明で三人称で語っているあたりも一応鄭和さんの語りのつもりです。成功しているかは別として…(正直、あまり自信はない…)
(今日はここまで!)
✏️創作の余談雑談:
「天灯」の参考に読んでいた呉存存『中国近世の性愛』に、馮夢龍の「情史」には同性愛者を扱った章もあると紹介されたので、「ひょっとすると、同じく馮夢龍が編んだ、「男女の恋愛を大胆に歌った民謡アンソロジー」という触れ込みの「山歌」にもあるのでは?」と読み返してみたら、数首並んでいるのを見つけた! 元祖馮夢龍推しの大木康先生は、同性愛については積極的にマーカー引いてくれる訳ではないので、自分の目が節穴だと見逃してしまう。
ということで、「三十年経った古米はただのカスだし、三十年経った家具は役立たずだし、三十年経った尻でどうしてやれるだろう」というしょーもない歌と、「この歌を「三十歳になって味わいが完全になった」と言っていたやつが聞いたら「尻を馬鹿にするものだ」と言っただろう」という馮夢龍のしょーもないコメントを味わいつつ、この良さをどうやって語ろうかと考えているうちに一日が終わってしまった。しょーもないけど、こんな短いのに、若くない同性愛者(特に受)への世間の侮蔑と、冗談まじりながらそれへ反論するコメントで多角的に状況を描いて一瞬で構造を見せるキレキレぶりは健在だと思うし、「天灯」書いた後で読んだけど答え合わせ的なことができて良かった。
(出典は大木康『馮夢龍『山歌』の研究』p568)
【お知らせ】明日12/30(土)のコミケ103@東京ビッグサイト❄️東ピ56b❄️で参加します。東5ホールです。
📚中国明代の江南が舞台のまちづくりゲーム「水都百景録」の二次創作小説集を2冊持っていきます。既刊かつ年末の慌ただしい時期ですが、会場で見かけましたらよろしくどうぞ〜⛄️
本日までの進捗:3846文字。スケッチやメモ含めた全体では6000字強。
今書いている二次創作の主人公が頬紅売りの男なので、昨夜にわかに「そう言えば頬紅ってどう作るの?」と思い立って調べ始めた(そんなことは書く前に調べなさい)。まず、困った時の「天工開物」を開くと何やら紅花餅から紅色を作る手順が書いてあり、さらにぐぐったら表参道に紅ミュージアムという紅と化粧の歴史についての企業博物館があることがわかったので、仕事帰りに見てきた。2部屋の小さい展示だけど予想以上の充実度で、帰宅して「天工開物」を再読して「わかる…わかるぞ…!」とムスカになっている。当然と言えば当然かもだが、中国と日本で基本的なところは同じ材料と手順で作っているのだな。
https://www.isehanhonten.co.jp/museum/
本日までの進捗:文章が続いているところが3533文字。左がver.04。右がver.06。語りの場の設定があまりに恣意的なのではないかと悩んで設計図を引き直して、方向性は間違ってなさそうと確信を得られた。多分、自分ががんばれば完成させられるはず…
ちなみにこれ↓の件なので、仕方ないなとは思うものの、ものは言いようなので発言した鄭和さんは女人国の女王に剥かれて大変な目に遭うがいいという気持ち。
https://x.com/muye_sanyue/status/1715946662877872319?s=20
マキノヤヨイです。創作集団こるびたるの中のひと(もしくは外のひと)。ここは、主に創作活動のゼミ発表的な使われ方をしている場です。