無口無感情無表情で、低身長でゴシックでミステリアスで、歌いだすととびきりうまくて、どんなに暗く下品な詞でも平然と歌ってくれて、それはどこか無機質な香りがして、聞けば少年として育てられているという、目にハイライトのない一人称「ぼく」の絵本の世界みたいなミクさんという解釈があるのだが?
DTMはごく一部のパソコンオタクがやる陰湿な趣味であり、音楽家は基本そんなイロモノには見向きもしなかった という当時の認識も現代ではまったく理解されないので、
彼がギークの星だったことを説明する前に、まずその社会通念の説明からになってくるので、輪をかけて伝承が難しくなっている。
当時のDTMerの立ち位置というのは、今でいえば 生成AI音楽のプロンプトをひたすら突き詰めてる人たち あたりの立ち位置にイメージが近いかも。
生成AIで完璧なプロンプトを詠唱できればいい曲が楽に作りまくれるやんけ!!と本気で信じて日々生成に励むギークのことなんか、音楽家は基本的に認識はしてるけど全然無視してるでしょ。
でもその人たちのやってることが、16年後には「作曲」という行為の代名詞になっているとしたら?作曲といえば生成AIを駆使する、そんなこと当たり前でしょ、ぼくが生まれたときからそうだったよー!っていう人たちが音楽界を席巻する世界になったとしたら?
そしてそれを現段階で既に”完成系”に持っていっている中学生が現れたら?
imoutoidの凄さとはそういうものだったんだよな。誰もが彼に夢を感じたんだよ。次世代の世界的なミュージシャンになるのは確定していて、その後どういう夢を描いてくれるんだろうと感じていたわけ。
imoutoid氏は、現代ではようやく浸透してきた手法を約16年前に単独で完成させていた、ギーク界の大天才少年 という感じなので、今となってはすごさを端的に説明しづらく、たいへん歯がゆいし、
一般への認知度の低さの割にクリエイターが未だにやたらと語り継ぐのもそういうこと。
懐かしいんだ、何もかもが
零式 / -45
https://www.youtube.com/watch?v=GY9VAno1Ego
Egypt / judithz
https://www.youtube.com/watch?v=ICu-imid724
omega iii / ATM
https://www.youtube.com/watch?v=2oFlW7QOFrE
https://www.youtube.com/watch?v=mXmL3KPAQtE
さいたまさいたまミームとそれに伴って生まれた楽曲のテイストがマジで好きで、このミームで生まれた曲はちゃんと追ってて、特に好きなのが4曲ほど保存してあったりする。
天誅『大人☆クリエイト』という名曲がある。
https://www.youtube.com/watch?si=t_lZZKh2Cq6FlOiT&t=2894&v=h-iMyv1Jh04&feature=youtu.be
かつてネット音楽界で、muzie総合トップ勢という人気を誇った天誅が最盛期に出した曲で、クオリティの高いリズミカルなトラックに、好きで始めた創作行為でチヤホヤされて消耗する大人クリエイトの世界を皮肉った歌をのせたネタ曲。
最後は魂の咆哮で締めるが、これがまあ刺さる刺さる。
天誅自身の状況と、そして様々なアーティストの事情等々をミックスして生まれた、精度としては大味なネタ歌詞なのだけど、その後ちゃんと大体この歌詞通りの顛末になってしまった彼らと、しかし当時はそうなるまいという力強い意思を感じる最後の一フレーズが、なんというか、趣、魂、人間をすごく感じるわけだ。
そして俺自身への戒めでもある。
ボカロP