『インシディアス 赤い扉』観た。褒めてない…。
見終わって真っ先に思ったのが、ストーリーのファン向け以上のものはなく、完全に閉じちゃったなーということだった。
このシリーズは作品ごとに色を変えるのでそれなりに楽しみはしていたが、ここまで守りに入って終わるとは思っていなかったので逆に意表を突かれた。いや、ホラー的な「!」もワンシーンくらいあったはずなんだけど、見終わる頃には忘れてしまった…。美術の先生(サクセッションの元妻のひとだよね)がかなりクソな授業してるのはどうなんだ。それと父親だけが柱だったという落とし所もどうなんだ。最後ガクッてなっちゃったよ。せっかくファミリー推ししてきたのに!「男になれることだ!」→「シ〜〜〜ン」をやったのに!のに!そこに持ってくんだ!
まあ、ともあれ終わって良かったですね。スペックスとタッカーのコンビはブルックリン99方式のホラーコメディで続けてくれてもいいんだが…。
『死刑にいたる病』観た。
あまりにもしょーーーーーもない話でびっくりした。
“サイコパス”の怖さエグさを楽しみに来る観客が殆どだろうからそういうやつなんでしょという思い込みで観ていたのだが、気合入った暴力描写は冒頭だけで、あとはやたら腰が引けてて何がしたいんだよと訝しんでいたところ、最終的には阿部サダヲのアイドル映画に落ち着いたので超納得した。理解。
ただ、感想検索したらこれでも「怖すぎる」みたいなのが散見されたので、単に見世物のエグみがどんどん薄味になってるだけかもしれない。
そのほか、若い世代がおっさんの立ちションシーンを立ちションであると理解できていなさそうなツイートしてるのを見つけてめちゃくちゃ笑った。もう珍しい景色になってんだね。そっかー。
ラスト・ナイト・イン・ソーホーについて独り言
やっぱ終盤の無神経はかなり酷い。「お勉強」じゃこの程度だよね〜というか、所詮他人事だもんね面白かろうねみたいな冷ややかな気持ちにさせてくれる。その一方でその他人事/エンタメ化して楽しむことも別に悪ではないと私は思っているので、まあ楽しめる人には結構良い映画なんじゃない?とも思う。
それを踏まえて未だに引っ掛かっている小骨は、この映画に対する批判が出たときの言葉のうち、「見世物にしてんじゃねーぞ」とキレた批評に対して「自分事を脇に置いて冷静に観られないなら距離を取れ、批評を名乗るな」と言い放ったあの眼鏡クイッとやってる感じのご意見のみが最低最悪だったなということに尽きる。まとめてしまえばいつものTwitterなんだけど、あの手のクソ野郎はやっぱり全員喉掻っ切ったほうが平和になるから虐殺しよーぜ!みたいな生産性のない過激なエンタメがほしくなってしまう。そのエンタメの中では当然エドガー・ライトも喉切られる側だし、それを笑って受け入れられないならお前は二度とエンタメ撮るんじゃねーぞと、まあそういうことなんだよね……(いつもにも増して自分の為だけの言葉でまとめました)
『NOPE / ノープ』感想
めーちゃめちゃ面白かった。前半のやりすぎなくらいのスローペースと主人公の無口さが、後半の転調のなかで効いてくるのすごく良かった。『未知との遭遇』的なUFOモノの恐怖と怪獣映画としてのスペクタクルが見事にリミックスされていて興奮したし、何よりnopeちゃん(映画内ではGジャンという馬の名がつけられていたけど、ぜったいnopeちゃんと呼びたい愛らしさがあの子にはある)の性質が実に愛らしくて良かった。好き嫌い多いとかヒラヒラしたカラフルなものが苦手とか、かわいすぎるやろ……。
nopeちゃんの声がじつは食われた人々の苦悶の叫びの集合体だったと判明するくだりは、巨大生物モノのなかでもかなり上位に位置するくらい気に入った。
画角が途中で変わっていたが、それも映画愛だけではなく技術面からの必要に駆られてのことがわかるだけに映画館で観なかったことを後悔したりもした。
映画が常に見る/見られることの快感と暴力に忠実な芸術であることを意識しつつ、その歴史からオミットされ続けた自分たちのアイデンティティをきっちり主張する手法が堂に入っていて、『アス』の雑さが嘘みたいに丁寧に重ねられた比喩も巧み。撮ることへの異常な執着も抜け漏れなく盛り込み、死角のない愛に溢れたエンタメに仕上げる手腕を堪能した。