アイスランドが国民の遺伝子情報を一企業に委託していることはご存じの方も多いのでは。
映画「湿地」はこの状況を背景にしたサスペンス映画。サスペンスとしても良くできていますが、その過程で「生命倫理」的な問いを浮かび上がらせている、という点でもうまい映画だと思います。
それにしても、「新生児医療」に携わっている友人から、アイスランドでは、現在、ほぼ「ダウン症」がゼロで移行しており、おそらくそのままの率で進むだろう、という話を聞いて複雑な気持ちになったことを思い出しました。これはもちろん、「出生前診断」によるものです。
昨今、「確信犯」のメディアのみならず、世間、あるいは学生のなかにも、むやみに「遺伝」ですべての問題を語ろう、とする傾向が強まっていることには危機感を感じます。
とくに医学部系の学生は、ほぼ完全にそれがデフォルトになっており、ほとんど優生思想と区別がつかない場合も多い。
現在の優生思想は新自由主義による格差の正当化に明らかに寄与しており、新自由主義と優生思想との共犯関係を批判する必要性を強く感じます。
とりわけ、分子生物学者や遺伝学者(の一部)はみずからの「学問」の「エビデンス」を逸脱して事実上「優生思想」に踏み込んでいる場合も多く、きわめて深刻な問題だと感じます。