出版業界人、真面目な人ほど「本が好き」すぎて本のことしか考えられない人が多い。思考回路が「本が好きなのが当たり前」のことが多く、ゆえに「なんでこんなに面白いのにみんな読まないのだろうか」とか本気で言ってたりする。あなたは相撲好きですか?あるいはイグアナ好きですか?え?興味ない?こんなに面白いのになんで?とか言ってもたぶん理解しない。だから「人は金やらなんやらの各種余裕がありさえすれば、特に興味のないものでも手を出すことがある」ということに思い至らない。この世のほとんどの人は本が好きではなく、ごくたまに「なんか読んでみよっかな」くらいで本を読んでいる。しかし各種余裕が失われているため、その頻度が減っている。ゆえに「政治/社会を変えること」が解決のための最短距離になる。しかし「本が好き」すぎてなにも見えない。あるいはそれを言い訳にしてなにも見ないようにしている。
本屋の書く本屋本、要約するとみんな「本はすごい」「本はいいものだ」「本には力がある」「本には......」しか書いてなくて、つまり本の「いいところ」しか書いてないので、数冊読めばもういいやってなる。あるいは「いかにして自分が本屋になったか」の話、つまりジャンルとしてはhowto本。そのへんはもう書いても意味ないので必要最低限にして、反差別反ヘイトのことばっか書いてます。ゆえにほとんどの業界関係者は読まないと思われます!!「理想ばっか掲げて、批判ばっかして、現実のことはなにひとつ知らない若造」がなんか言ってる、みたいに思われてますから、私は。現実見てないのはどっちだよ、という話ですが。そして30歳はもう立派な大人だよ。だから責任を果たそうとしてるんですけどね。
だから自著は「本」を通してこのようなことを「前向きに」伝えようとしたのだけど、うまく伝わるかどうかはわからない。かれらはみんな「本の力」を信じている。本が自分の人生や世界全体を変えるということを、かれらは信じている。にもかかわらず「本がこの社会に実際に与えている影響」については考えようとしない(特に悪い面については)。なのでその前向きな部分(=本はいいものだよね!人生変えちゃうよね!救われるよね!)を否定せず、同時に「ちゃんと本の持つ力の怖さにも目を向けようね」ということを書いた。どうせほとんどの人には伝わらない(というか読まれすらしない)。しかし数人でも意識と実践が変われば、そこからなにかは生まれる。とりあえず初版3000部を売り切って重版をかけるレベルまではいきたい。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784272331116#