近藤ようこさんとお会いしたとき、『ホライズンブルー』の話をいろいろお聞きして、未読だったので読みました。赤子を殺しかけた母親がそこに至るまでの心理の流れを、幼い頃からの母親や妹との関係から丹念に描いていき、虐待の連鎖からの救いを模索するという、すごい作品でした。
児童虐待について調べるうちに、神話学や民俗学の「殺す母性」にいきついた、というあとがきも興味深かったです。連載が1998年から、刊行が1999年の作品がいまも新刊で買えるありがたさ。
加門七海(作) 五十嵐大介(絵)東雅夫(編)『ねこまがたけ 猫魔岳 ばけねこしゅぎょうのやま』(岩崎書店)を頂いたのですが――これは最高ですね…! 猫がときどきいなくなるのは、山にある猫の国で修行していたからで、それにもあれにも化けてた…。
『キンドレッド グラフィック・ノベル版』(小澤英実翻訳 フィルムアート社)をお送りいただきました。いまもなお重要性を増すオクテイヴィア・E・バトラーの傑作小説を、ダミアン・ダフィー翻案、ジョン・ジェニングズ画にてビジュアル化。ぱっと開いて目に入った絵が、すぐどの場面なのかわかる…。
奴隷制時代のアメリカ南部へタイムスリップを繰り返すようになった黒人女性デイナの物語ですが、現代がセピア調で、過去が鮮やかな配色になっているのも新鮮。バトラーとの交流について触れたンネディ・オコラフォーの序文もすばらしいです。
『穏やかな死者たち』(東京創元社)を頂きました。18人の作家による「シャーリイ・ジャクスン・トリビュート」なんですが、エリザベス・ハンドにカルメン・マリア・マチャードに、ジョイス・キャロル・オーツ、ジェフリー・フォード、ケリー・リンク――と執筆陣がすごい。10月6日頃発売。
「だってわたしたし、いつも家の中で暮らしているじゃない」というセリフがさりげなく出てきたりしてにやっとしますね。
それにしても合田のぶよさんのイラストと柳川貴代さんのデザインがすてき。18の体の一部を集めて大魔女を復活させようとする儀式にたとえる深緑野分さんの解説もいいです。
とりしまです。Dempow Torishima 絵と小説をかきます。最新刊は長編『奏で手のヌフレツン』。著書に『皆勤の徒』(英訳版、仏訳版も)『宿借りの星』『オクトローグ』『るん(笑)』、高山羽根子さんと倉田タカシさんとの共著『旅書簡集ゆきあってしあさって』。SFマガジンで「幻視百景」連載中。