>人々の主題の用い方は、バッハの音楽がそうであったような、作品のあらゆる面に滲み出るものではなく、ある特別なもの、著しく波乱に富んだもの、瞬間に属するようなものです。
ここが個人的には一番面白いと感じた点。
主題労作的な観点からの音楽の展開は単一主題を要求していたのかなと思った。
主題労作的な展開に拘ろうとすると、第2主題や第3主題は第1主題の首位性に席を譲り静止的要素を提供するに留まってしまったり特定の役割を担う部分的主題に留まってしまうのかなと思う。
それらには単一主題が備えていたような楽曲全体に及ぶ全的支配力(?)のようなものを欠いていたのかもしれない。
一方、複数主題制は対比や群像劇的な展開を要求していたのかもしれないと思うのだが、それらのような展開は確かに"ある特別なもの、著しく波乱に富んだもの、瞬間に属するようなもの"に適合していたのかもしれない。
刹那的/機会的存在として主題を利用するというのが、ここではバッハのやり方と対比されているのかもと思った。