アマプラでアッバス・キアロスタミの「オリーブの林を抜けて」を観た。冒頭から監督役を名乗る人物が現れて映画内で映画撮影を始める劇中劇の構成。ただ、この撮影の進行がとてもゆったりというか場当たり的というかで、しかも劇中俳優が監督の指示に従わず個人的な理由でセリフを口にしないので撮影はリテイクにリテイクを重ねるけど、監督はあまり気にする様子もなく現地の人々との交流に勤しむ。やさしい世界。
で、物語の根幹は劇中劇の外側にあって、主役の男女2人のラブストーリーというか、男の側の一方的なアタックというか、これは言い寄られている女子が大変そうなんだけど、文化も社会も我々とは違うのだろうから、そういう見立てで正しいのかは分からないまま。
まあ、このディスコミュニケーションの具合は、前に観た同監督の「友達のうちはどこ?」と同じなので、イライラ度は前ほどではないけど、やっぱりイライラするよ。
あと「友達のうちはどこ?」の主演少年が背丈も伸びて大きくなった姿で脇役として登場。また、少年が走り回ったジグザグの坂道が今回も出てくるなど、本映画で完結しない物語の作りになっていて、けっこう楽しめた。
確か同監督の作品だったと思いますが随分前に「そして人生は続く」(?)を観ました。
深夜にNHKが流してくれていたものを録画していたのだと思います。
その映画では終盤にブランデンブルク協奏曲からの抜粋が使われていたように記憶しています。
その場面では生命力の高まり(?)や生命賛歌(?)のような感情やエネルギーが描かれているような気が、自分にはしました。
バロック音楽の特徴は躍動感や力強さ•生命力であるというような記述を後年になって読んだ自分は、音楽を映像へ適合させるキアロスタミ監督の卓抜な手腕が自分に呼び起こした感動を改めて思い出しました。
それは、音楽を映像と結び付ける事によって自作品の印象を観客の記憶へより強く残そうとした結果だったのかな……とふと思いました。 [参照]