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「国民打益(こくみんだます)党だ。知ってるだろう。
すごーくわかりやすく言うと、
お前にはその政党の人たちと積極的に交流して、視聴者に向けて打益党のイメージアップに繋がる活動をしてほしい」

餅付「え!?それって……」

マテヨ「TouTube社は昔から打益党と深い関わりがあってな。
TouTube上で選挙の際に打益党の宣伝をしたり莫大な資金を捧げる代わりに、打益党から税金面で優遇してもらったり、
TouTube社に不利なトラブルを揉み消してくれていた。
win-winの関係なんだ」

マテヨ「だが近年、他の動画共有アプリやSNSが広まったことでTouTube自体のアクセス数が減ってるんだ。
利用者が減ってTouTubeの力が弱まれば打益党としても都合が悪い」
「その現状を打破するのがTOTだった。そして、TouTubeの次世代を担う存在がお前だ」

餅付はあまりにもスケールの大きな話に呆気に取られた。
マテヨ「お前と打増党の友好的な関係を見せていけば多くの視聴者が打益党を支持するようになる。
そうすれば日本を支える二つの組織が救われる。こんな名誉な役目ないだろう」
餅付「そんなことしていいんですか?法的に引っかかるのでは…」
マテヨ「そこは大丈夫だ。引っかからないようにやるさ」

餅付「でも…僕のチャンネルの活動に合わない気がします」
マテヨ「餅付。お前は日本一のTouTuberだ。
トップの人間がトップたるには一つの活動に固執しちゃダメだ。
活動の幅を広げて、最終的に国民を正しき道に導くTouTuberになるんだ」

餅付「………ごめんなさい。
これからも、俺が好きに食べる事や願いのことは俺が頑張れば出来ることだと思う。
けれどそういう事に関わってしまったら、それすら出来なくなってしまうと思います。
だからそういうことなら断ります」

マテヨ「……は?」
「それでいいのか?食い物だけの問題じゃねぇ。
もっともっと登録者伸ばしたいだろ?辞退したらこの先の高みは見られなくなるぞ!」
餅付「答えは変わりません。もしそれが願いを叶えてもらう条件なら優勝は辞退させてください」

マテヨ
「……そうか。残念だよ餅付。

ここまで聞かれたからには消えてもらうしかないな」

餅付「え?」
マテヨ「おいモレソ!!コイツが炎上するようなネタをでっち上げろ!!全世界を敵に回すような特大の炎上ネタをなぁ!」

モレソ「モモモ!やったレソ〜!!やっと面白くなってきたレソ!」

餅付「ど、どういうことですか!」

マテヨ「言葉の通りだ。お前が社会的に死ぬような炎上ネタをでっちあげて優勝を取り消してやる。
“今回”のは今までの炎上とは比べものにならないネタを用意してやるぜ」
餅付「今回のって、アンタまさか──」

マテヨ「そうだよ。お前たちに付き纏った炎上の数々、アレをしかけたのはオレたちだ」

「オレらの目的のためには登録者を増やしてもらうのは都合がよかったが、あまり数字を増やし過ぎてオレの脅威になっても困るからな。
ほどほどに燃やして力を抑えさせてもらったよ」

餅付「なんてことを……その炎上のせいでどれだけの人が苦しんだと思ってるんだ!」

マテヨ「ハッ!周りが炎上してくれたおかげでオメーは成り上がれたんだろうが!
お前が消えようがトップに据えられる奴は他にいくらでもいる。じゃあな餅付」
餅付「そんな………やめろー!!」

【悲報】『「女は二郎に来るな」人気TouTuber餅付食人、性差別発言か』
『餅付食人衝撃発言「目玉焼きに塩派は人権ない」』
『餅付食人、ファミレスのドリンクバー全部飲み干して店を潰すwww』

餅付は事実無根の悪事を広められたことで、世間からさまざまな誹謗中傷や非難を浴びた。
中には殺害予告や住所特定を呼びかける者もいた。
身の危険を感じた餅付は住んでいた家を引っ越し、その家から出ないようになった。
ネット上には今も餅付への誹謗中傷が散見される。

開示請求や、弁明すらも無意味に思えるほどの悪意が渦巻いていた。
餅付は世界そのものが自分の敵に見えた。
その恐怖から逃げるように過食に走った。

食べることは彼にとっての精神安定剤だ。
自然主義者である母親から過剰に質素な食事を提供され続け、生活のあらゆる点を管理された反動で、
食に対する執着が強まっていた。

餅付「ウッッ」
餅付の身体は既に限界を超えていた。
食べていた菓子パンを手から落とし、壁に寄りかかるように倒れた。

餅付が目を覚ますと、そこには見知らぬ天井。

餅付の目覚めを確認すると、彼らは安堵の顔を浮かべてた。
Minato「無事でよかった〜餅付くんここがどこだかわかる?」
餅付は一生懸命状況を振り返った。

自分は過食とストレスによって倒れ、そのまま──
餅付「俺、死んでないの?」

旧惑星「餅付くんが動画もSNSもずっと更新してないのが気になってさ。百連撃がキミの家を知ってたからみんなで駆けつけたんだ。大家さんに事情を話して鍵を開けてもらって、そしたら君が倒れてた」
そう話す旧惑星の声は、歌い手として活動していた頃に比べ随分高音になっていた。

ゆうちゃむ「それであーしらで救急車呼んだの。あと数分遅れてたらやばかったって」
帽子を被った女性がゆうちゃむであることを、餅付は声で気づいた。
消息不明とされていた彼女とこのような形で再会したことに餅付は内心驚いた。

餅付「…なんで助けちゃうの。俺、いろんな人から死を望まれてるのに。
俺なんか助けたら君たちまで叩かれるよ」
Minato「だからって死んで当然ってことはないでしょ。まぁ思い詰める気持ちもわかるけど」

百連撃「つうかよ、今出回ってる炎上だってどうせ全部ガセだろ?名誉毀損でモレソを訴えようぜ」
餅付「ダメだよ。モレソは…アイツはチョマテヨやTouTube社をバックにつけてるんだ。
俺が何か言ったって揉み消されて終わりだよ」
ZarameP「マテヨ…?どういうこと?」

餅付「信じてもらえるかわからないけど…」
餅付は表彰後のマテヨとのやりとりを話した。
マテヨの政治組織との癒着、マテヨがモレソに命じ、自分含め人気TouTuberたちを意図的に炎上させていたこと。
その話にみな驚いたり、半信半疑だったりと様々な反応を見せた。

餅付「信じなくてもいいからね。どっちにしても時間が経ったらいつものように、
みんな何事もなかったかのように忘れるんだ。
それまで静観してれば…いいんだよ」
その言葉はほとんど自分に言い聞かせていた。

百連撃「いいわけねぇだろ!デマならちゃん訴えろや!」
旧惑星「やめろ百連撃!」

ゆうちゃむ「…それってさ、リルルちゃんもマテヨのせいで炎上したの?」

餅付「え?」
ゆうちゃむ「モレソがリルルちゃんのプライバシーなこと勝手に明かして炎上させて、リルルちゃんすごく思い詰めてた。あれもマテヨが命じてたなら許せない」

ゆうちゃむは今も集中治療室で眠る古泉瑠璃の姿を思い出していた。

ZarameP「…どこまで関与してるんでしょうね…」
ZaramePはファンに襲われた際につけられた腕の傷をさすった。
自分を襲ったファンが自分の場所を特定した理由は警察から明かされなかった。もしそれがモレソやマテヨの仕業だったらと、恐怖した。

百連撃「クソっ、俺が逮捕されたのもマテヨのせいだってのかよ」
Minato「それ百連撃サンの自業自得」
餅付「で、でも何にしても証拠がないんだ。モレソとマテヨの繋がりも、政治家との癒着の証拠も。マテヨたちと戦うなんてできないよ」

餅付は頷いた。彼らの声援に応えるように。

餅付「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

餅付「みんな聞いてほしい。
あの悪評はモレソとマテヨがでっち上げた『嘘松』なんだ」

餅付はマテヨとの間に行われたやりとりを全て話した。

それらの話の真偽は、先ほど配信されたマテヨとMinatoのやりとりが全て証明している。
それだけではない。
餅付を信じたいと願ったファンの意志、
そしてかつての人気者たちの訴えが、餅付の証言に強い信憑性を纏わせた。

れを観た世間は餅付に対して同情を向けたり、餅付を叩いていた者たちを批判した。
そして、彼らの怒りの矛先はマテヨとモレソに向いた。
モレソ「モモ……ヤバいレソ!これは逃げておかねば……」

百連撃「見つけたぞチキンヤロー!!」
モレソ「モモーーッ!」

旧惑星「そんなに炎上が好きなら経験させてやるよ」
モレソに炎上させられた者たちが一斉にモレソを囲んだ。

マテヨ「やばい!やばい!打益党に頼んでSNSの情報規制をしてもらわねば……!」
しかしそれをする前に、マテヨのスマホに忙しなくSNSの通知が鳴り続けた。

マテヨ「ヒッッ」
それらは、マテヨに向けられたあらゆる批判的なメッセージだった。

「マジかよマテヨサイテーだな」
「幻滅しました。登録解除します」
「俺は前からキライだった」
「元ファンだが登録者500万超えたあたりからおかしくなってた」
「犯罪者」
「存在が滑ってる」

誰がが言った。
自分のフォロワーの数は応援者の数ではなく、向けられた銃口の数だと。
人としての道を外れれば、その引き金を引かれてしまう。
世界的スターだった男が、身をもってそれを証明した。

餅付「みんな…あの時は本当にありがとう」
旧惑星「いいんだよ。俺としても女性の敵を始末できて本当に良かったと思ってる」
Minato「あっくんさんのファンにバカ怒られましたけどね」

ZarameP「私は見るしかできなくて…ごめんなさい」
餅付「いやいや!元々あんな危ないこと誰も巻き込みたくなかったから!
それにZaramePさんも俺の安否確認しに来てくれたし…俺の恩人だよ!」
皆が餅付の言葉に同調する。
ZaramePは申し訳なさそうにしながらも、素直に受け止めてくれた。

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