『LETTERS UNBOUND 第2便 テーマ:MONSTER』(ほんやくシスターズ)
プロ文芸翻訳家ユニットの未訳短編の同人誌第2号。コミック含む5作が収録。
私が特に好きな作品を2つ紹介します。
クリストファー・ボーレン「ズーョジ」(廣瀬麻微訳)は映画『ジョーズ』の二次創作。
語り手の青年は、男らしさやシスへテロの規範に満ちた田舎町アミティで職不足と彼氏不足に苦しむ。町の外から来た男とこっそり寝るものの、すぐ関係は終わる。
町は巨大な殺人サメの脅威に晒され、語り手はやってきた専門家と関係を持ち……。
2021年版ベスト・アメリカン・ミステリー&サスペンスにも再録された、鬱屈が沸騰する物語。訳者解説もとても充実しています。
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#文学フリマで買った本
エイミー・ボナフォンズ「馬」(武居ちひろ訳) 語り手の女性わたしとセリーナは博士課程時代からの友。約40歳でパートナーなし。2人は互いに注射を打ち合う。セリーナはひとりで妊娠し母になるため、語り手は女性を馬化する薬(!)を接種して人間ではなくなるために。
かつて『VOSTOK』誌で藤井光氏が翻訳紹介したボナフォンズの、奇妙だが共感できる切実さを帯びた短編。主人公はバイ或いはパンセクシュアルです。セリーナとの恋ではなさそうな強い結びつきも、異なりすぎて二人で一緒にいられない哀しさもとても印象的です。
2作とも野生の強い生き物(モンスター)が不自由な人間社会とは対照的で、実に好みでした。
本書は通販の予定があるそうです。
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