大学時代の後輩が、今年は内輪で集英社マスターピース読書会を主宰してくれるというので、『01カフカ』(多和田葉子 編  編集協力 川島隆)を読みました。まとめて読むと鬱屈と不条理、マゾヒズムとみなぎる性への関心、身を落とすことへの嗜好、破滅や獣への関心の塊でした。あとあえて軽薄な言い方をしますが、哀しくキモいユーモアがあります。
ただ「訴訟」(川島隆訳、「審判」の異題が有名)は昔も挫折したし、今回も斜め読みしてしまいました。長すぎる。

“カフカの書いた小説は今の日本の読者には意外に身近に感じられるかもしれない。わたしたちは近い将来、何も悪いことをしていないのに逮捕されるかもしれないし、拷問を受けるかもしれない。そんな時にカフカを読んでおけばきっと役に立つ。(多和田葉子・解説より)”
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「お父さんは心配なんだよ」(変な生き物オドラデクを紹介する例の話、多和田葉子訳)や「雑種」(竹峰義和訳)“私は一匹の奇妙な動物を飼っている。なかば小猫で、なかば小羊なのである。父が所有していたものの相続品なのだが(略)”みたいな、短めで動物が出てくる話が好きです。
「巣穴」(由比俊行訳)という、穴にいる生き物がひたすら穴世界や外的の気配を一人称で綴る短編も好きだし、人外の視点を描く小説としていい手本のように思いました。

多和田葉子の解説も、生き物やセクシャルさにばっちり言及しており、かゆいところに手が届いています。
“ちなみにこの雑種の生き物は、オドラデクと同じで、「カフカ可愛らしいものリスト」に載せることもできるし、歌姫ヨゼフィーネといっしょに「カフカ動物リスト」に載せることもできる。カフカの場合は、動物がみんな可愛いとは限らないし、可愛いものが動物であるとは限らない。”

会内でゲーテ→バルザック→トルストイの山を越えられないのでは説が有力になり、マスターピース読書会は1巻目で路線変更しそうです。そんな……!

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ともあれ、今日は参加者ほぼ全員が留年経験があったため、カフカ「変身」が身につまされすぎる件が話題になりました。1時間半で全収録作について話ができたし、割とよい出来の読書会でした。

1回目で存続が危ぶまれるシリーズ読書会、突入した特殊部隊が次のカットで全滅しているやつだった。

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