『複 vol.1 福岡を、すいとらん?』(複編集部, 2023.11)はとても真摯な論考集でした。寄稿者4人は福岡出身者とそれ以外が半々で、ほとんどが大学院生のようです。郷土史あり、現代社会/文化史ありですがどれもものすごく親切で、門外漢も読めばゼロからわかるように書かれています。
イチオシの寄稿者はohyoさんで、北九州市の水巻町で1950年代後半に刊行されていた炭鉱「サークル誌」いわばzineの先祖の内容を回顧する「炭鉱が背負った十字架」と、福岡のライヴ会場やビートメイカーを丹念に紹介した「革命の鼓動に揺れる福岡」どちらも良記事でした。
他の記事もアジアやアメリカと福岡の関係性を批判的に振り返ったり、市長のポピュリズムっぽさを詳細に解説したりと充実しています。
最近はあまりイベントで買った同人誌/ZINEの感想を書いていなかったのですが、今回手に入れた本は九州で暮らす個人の生活と密接な内容ばかりで、簡単なものでも感想を残しておきたいと思いました。10~20年前の状況もあっさり辿れなくなるので。