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週刊読書人2023年9月29日号に、サリー・クライン著『アフター・アガサ・クリスティー 犯罪小説を書き継ぐ女性作家たち』(服部理佳訳、左右社)の書評を寄稿しました。少しセルフ引用します。かなり慎重に書いております。
“本書は課題や歴史的経緯を紹介する意欲的な本だが、著者の関心をもとに構成されている印象は否めない。”
“中盤以降では現代の犯罪小説における女性主人公の表象とその変遷が書かれる。ここが本書の読みどころだ。第五章から七章にかけては私立探偵や警察官の主人公たちとそのキャラクター造形が紹介され、現実の女性の労働や社会参加の反映や、現実が理想とは程遠いがゆえにフィクションに託された願いを感じられる。レズビアンの主人公たちが次々と紹介される第八章「レズビアンの主人公登場」も充実しており、熱意を感じるパートだ。”
sayusha.com/books/-/isbn978486

ミステリではなく犯罪小説・警察小説に焦点を当てた本であること、体系的に潮流を論じた本ではないことも注記しました。やや辛口で恐縮ですが、章によって客観性やトピックの掘り下げにムラはあります。また、女性であればこうだろうという著者の主張にもやや反発と危うさを感じました。
とはいえゼロかイチかで取捨選択すべきでもないと思いますし、英国での近年の動きーープロ作家団体の新設や、賛否両論を巻き起こした“女性が暴力を受けていないスリラー小説専門の賞”の創設は初耳で興味深かったです。著者は1938年生まれの英国人女性。

さらなる注意:なお本書ではJ・K・ローリングが複数回言及され、業績を評価されているのでご注意ください。巻末で、日本語版担当編集者はトランス差別に反対する態度を明確にしてくださっていますが。
実際の女性の犯罪被害件数もたびたび記載されているので、元気がない方や怖いことを思い出しそうな方もご注意ください。

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