「何でまた埋めるんだい。家に持って帰ればいいじゃないか」
「そんなお土産みたいな言い方あります?」
「そういえば君にお土産があったんだよ。何だったかなあ……」
「どうせ木彫りのマグロとかじゃないですか?」
「木彫りは合っていた気がするな」
「いりません」
「人のお土産を断るもんじゃないよ」
「いらないものはいらないんですよ」
「今度君の家に行った時に置いて帰るよ」
「ゴミを人の家に不法投棄しないで下さい」
「今ゴミって言ったかい? 僕が折角善意で買ってきてあげたものを、いや貰ったんだったかな? ゴミ呼ばわりするとは坂上君、君は天国には行けないよ」
「死体を埋めようとしている時点で天国には行けませんよ」
「それもそうだね」
「風間さん、死体を埋めに行きませんか」
「いいね。……ちょっと待ちたまえ、今死体って言ったかい?」
「死体って言いました」
「誰の」
「さあ……」
「知らない人の死体かい?」
「知らない人の死体です」
「名前も?」
「名前も」
「そんなことがあるものか。ちゃんと財布の中まで確認したかい? 普通は免許証か保険証くらい入っているものだよ」
「そこまでして調べたくないんです」
「怠け者だねえ。そんなんじゃあ将来碌な大人にならないよ。もっと張り切って調べなよ」
「本当に怠け者だったら死体を埋めになんか行きませんよ。それに、名前を知ってしまったら名前が付いてしまうじゃないですか。死体に」
「そりゃあ、死体ってのは生まれた時から死体って訳じゃないだろうからね。名無しの権兵衛って事はないだろう」
「故人としてじゃなくて、死体として扱うには名前なんか知らない方がいいと思うんです」
「ふうん。君がそう思うなら好きにすればいいと思うけれど」
「付き合ってくれますか?」
「まあ、坂上君の一生分の弱みを握るための時間なら無くもないよ」
「僕がやったのか、とは訊かないんですね」
「そりゃ君がやったんだろう?」
「拾っただけかもしれないじゃないですか」
「拾った見知らぬ人の死体を埋める? 君が? まさか」
なおテキストベースだったら上記の問題は全てクリアされるのかというとそれとこれとは別である
起き抜けのきゅうり