それ終履歴則清パロ
下心がなかった、とは言えない。
だがそれにしたってここまで見事だとは思っていなかった。それで思わず本音がまろび出た。
「なんだお前さん、わざわざ履歴を消しているのかい。何かやましいものでも見てるんだろう」
にまにま笑うおまけつきだ。
だが清光は涼しい顔で頷いた。
「そりゃそうだよ。現にあんただって俺のやましいものが見たくて履歴欄を覗いたんだろ」
そのとおりである。
今朝、則宗が私用で使っているタブレット端末が壊れた。近頃どうも動きが怪しいと思っていたから驚きはしなかったが、可愛い彼氏と一緒に飲むホットチョコレートを取り寄せようと決済に進んだところだったので則宗は焦った。あと一時間で注文すれば夕方には品物が届き、今夜一緒に楽しめると思っていたのに。
「坊主すまん、ちとお前さんの端末を貸しておくれ」
「いーよ、ちょっと待ってね」
清光は充電中だった端末を手に取り何やら操作してから則宗に手渡してくれた。スリープ解除かと思っていたが、そのときに履歴を消していたらしい。
無事に買い物を済ませ、これでよしと端末を返そうとしたところで則宗の心にふと魔がさした。
──坊主はふだん、どんなことをこの端末で調べたり眺めたりしているのだろう。
それ終履歴則清パロ
「それもそうだけど。でも単に見てるよって言うのと、どういうのを見てるのかを知らせるのって違うだろ。それは俺のプライバシーです」
なんだか突き放されたような気がして則宗は食い下がった。
「だが僕らはこ、恋人だろう。ただの恋人じゃあない、二世をを誓った仲じゃあないか」
清光の表情が甘くやわらいだ。
「そーね。あんたは大切な俺の恋人だよ」
「だったら」
「でもそれとこれとは別」
きっぱりとかぶりを振る清光に、つけいる隙はなさそうだ。
それ終履歴則清パロ
しょげる則宗を見て清光は笑みまじりにため息をついた。
「則宗」
呼ばれて顔を上げると、いつの間にか清光の顔が吐息のかかるほど近くにあった。さっきまでちゃぶ台をはさんでああだこうだと言い合っていたのに、唇がふれそうな距離に則宗の胸が高鳴る。
「ふだん俺が何考えてるかは、俺だけのものなんだよ」
「…うん」
頷くしかない。清光はそうなのだ。則宗が、叶うならすべてを清光にさらけ出してしまいたいと思っているのとは裏腹に。
「でもね」
うつくむ顎先を、赤く艶やかな爪紅を乗せた指先がすくう。
「今、こうやってあんたと一緒にいるときに何を考えてるのかは、ぜんぶ教えてあげるよ」
「……!」
身体の中で熱がはぜたように体温が上がる。
「俺は今、あんたとキスしたい」
両腕が首にまきつく。吸い寄せられるように則宗は小さく薄く、そして少し冷たい唇を啄んだ。
「……あんたは?」
「ぼくも、……んぅ」
尋ねるくせに清光は則宗の唇をにゅるりと舐めてしまう。ちゅ、ちゅ、と小さな音がいくつもふたりの間で弾ける。
「ぼくも、したい……」
それ終履歴則清パロまとめました
https://crepu.net/post/4983362
くるっぷにまとめました。ちょっとだけえっちな描写があるので念のためセンシティブ設定しています。
ちなみに元ネタのオチは今も思い出せていません。
それ終履歴則清パロ
「だいたいさ」
と清光は続ける。
「あんたにだってあるだろ。俺に知られたくないことがさ。どんなオカズで普段抜いてるのかとか」
どっと汗が噴き出した。
確かに知られたくない。だがそれは恥ずかしいからであって、清光のような「内心に属することでプライバシーだから」という理屈があるからではない。
そうだ、と則宗は思った。
そうなのだ。
恥ずかしがって照れて「履歴なんて見せたくないんだもん」と言われていたら、則宗もおとなしく引き下がっていた。まあ多少しつこくして清光を恥ずかしがらせたかもしれないが、今のような食い下がり方はしていなかったと思う。
則宗は──そう、さみしかったのだ。
俺のここから先には立ち入っちゃだめだよ、と線を引いて突き放されたような気がしたのだ。