フィリップ・マーロウ、リュウ・アーチャー、名無しの探偵、マット・スカダー。登場時には積極的に事件に関わり解決に導いていった探偵たちが、シリーズが進むにつれて、事件を観察しながらもほぼ「何もしない」存在になっていった。たかが(とあえて書く)探偵風情が解決できるほど、世界も他人の人生も簡単なものではないし、また解決すべきものでもないということに、優れた作者は気づいてしまうのですよ。ただ、どんな世界でも、どんな他人の人生でも、そこから目を背けずに認識すること。ハードボイルドとは、そういう生き方のことなのです。