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20代から30代にかけて、とにかくがむしゃらにミステリ小説、特にハードボイルド小説を読みまくっていた時期があった。世間一般のハードボイルドのイメージはおそらくマイク・ハマー的な(大藪春彦的、の方が分かり易いか)「俺が掟だ」なんだろうけども、むしろ作者が真剣にハードボイルドを突き詰めていくと、探偵やそれに類する登場人物は「事象の観察者/傍観者」にならざるを得ない。そしてそこが自分にはとても滲みたんだ。

フィリップ・マーロウ、リュウ・アーチャー、名無しの探偵、マット・スカダー。登場時には積極的に事件に関わり解決に導いていった探偵たちが、シリーズが進むにつれて、事件を観察しながらもほぼ「何もしない」存在になっていった。たかが(とあえて書く)探偵風情が解決できるほど、世界も他人の人生も簡単なものではないし、また解決すべきものでもないということに、優れた作者は気づいてしまうのですよ。ただ、どんな世界でも、どんな他人の人生でも、そこから目を背けずに認識すること。ハードボイルドとは、そういう生き方のことなのです。

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