阿部登龍 狼を装う 読了。
前作「龍と〜」でも姉妹間の確執が描かれていたが、今作での昔の恋人同士や母娘間で起こる愛憎相半ばする感情描写の巧さでこれが筆者の強みだと再認識した。こういう感情は誰しもが親兄弟友人恋人に抱くであろう普遍的なもので、そこへの導線がしっかりしているので登場人物たちへするりと感情移入できる。感情のアップダウンは物語のアップダウンにも通じ、続く展開へのバネとしての役割も兼ねており、高い構成力を感じられた。衣狼(ウェアウルフ)やトルソーなどの言葉遊び、言葉選びも実に洒落が効いている。タームがお洒落なのが一番格好いいんだから。今回個人的に印象に残ったのはおとぎ話を比喩的に使っていたところで、真の寓意にはお約束をお約束っぽく感じさせずにお約束させる“力”があるなと思った(どこかでパクりますね)。昼と夜の二重生活、獣のスーツということでなんとなく変身ヒーローもののような読み口を感じていたが、前述の寓意力からジキルとハイドが根底にあるかなと推察、ところがスーツの暴走からの……でやっぱりヒーローものの息吹を感じながらの読了となった。筆者の想定とは異なる読み口かもしれないが、“畳まれる”べきものがきちんときれいに“畳まれた”まとまりある良質な物語であると思った。
@kamidana406 ありがとうございます! たいへん丁寧に読んでもらえて冥利につきます。いつぞやの通話でお話していた(しましたよね?)のがようやく形になりました。非現実的要素のある中でどれだけ登場人物の感情をたどれるか、個人的な課題のひとつなので、そう読んでもらえたなら安心です。衣狼(ウェアウルフ)あたりはもう、タームありきなので……笑 「おとぎ話」も、意識的にちりばめたモチーフであったので、拾ってもらえて嬉しいです!
@kamidana406 それですそれです!>ファッションSF なんのタイミングでしたかね。当時はワーキングタイトルの「衣類婚姻譚」でした。生きた人間、だいすき!
@abe_dragonslay 衣類婚姻譚、言ってましたね! それか~~