完璧な医療と、医療の瑕疵
研修医の誤診などで男子高校生死亡、遺族「何度も助けられる機会あったのに見過ごされた」 : 読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/national/20240617-OYT1T50175/
第一報のタイトルに「研修医のミス」ってあって、気になってずっと続報を追ってるニュース。
というのは、普通はその医療的な責任を負うために上級医がいるはずであり、責任の所在が「研修医」ってそうそうないから。
で、気になるのは『医師や看護師による閉塞症状に対する適切な処置が行われず』ってところ。診断ついてから入院までの時間が空いてるのは、事務的なことかなって思ったんだけど。(入院後に検査すると包括請求になるので、外来扱いで検査してから入院はままある)これ読むと、もしかして文字通り「放置」だったのか?初期か後期かわからないけど、研修医が単独で診断したりとか、色々体制そのものの不備はありそう。
いずれにせよ、この「研修医のミス」ってタイトルはなぁと思ってしまう。
こんなのが医者なのかとか、まぁ、うん。
完璧な医療と、医療の瑕疵
採血とかだと、やっぱり定期的に患者さんから「ご意見」が挙げられる。曰く「一回で取れなかった」とか。うーん。正直、採血に関してはベテランでも百発百中は無理だし、痛くしないことも無理。針刺すんだから。痛くないのはたまたま痛点外れたからってだけで。
でも、当然そんなこと患者さんには関係ないし、やっぱり「ほぼ」100パー成功で当たり前なのも確か。なので、新人には「失敗するのは仕方ない。ベテランがやっても失敗することはある。でも、それが『当たり前』という態度を患者さんの前では絶対取るな。卑屈になる必要はないけれど、失敗しても二回目のチャンスを貰える態度を取れ」とはもう毎年毎年言っている。きちんと対応できていれば、ほとんどの患者さんはちゃんと二回目のチャンスをくれる人ばかり。
でも、残念ながらときにはモンペみたいな人もいる。一事が万事いちゃもんをつけてくるし、威圧的だったりする。採血とか検査怖いの裏返しの人もいるけど。正直、それ若手にやると
萎縮して失敗→クレーム→若手が自信なくして出来ることが出来なくなる→最悪辞める
の負のスパイラル。もちろん、若手の頃は上の人間が変わるけどね。それもいずれは自分でやらなきゃいけないわけで。現実を見せるのと若手の心を守るって両立がここ数年は難しいなって。
完璧な医療と、医療の瑕疵
わたしも中堅と言われ久しいけれど、ここ最近は特に「完璧な医療」が求められることが多いなって感じる。そのつもりがなくても、「一回で採血してね」とか「痛くしないでね」とか「楽に検査受けられるようにして」とかは毎日言われるし、それでもういちいちビビる経験年数ではないけれど。
でも、それは当然な気持ちだよね。わたしだって、自分が受ける側ならそういう思う。でも、例えば胃カメラひとつにしても「TVでやってたみたいに意識なくして」とか簡単に言われても、それには個人の病状とか色々制約もあるわけで。あと「海外だと〜」とかも。そりゃ、日本と海外では医療事情も保険制度も違うからねぇ。国内に限っても、施設によりマンパワーや設備も違うしね。「どこそこではこうだったのに!」も、うーん、うちはその「どこそこ」ではないからねぇ、困っちゃうねって。
昔聞いたのは「日本って『お産は安全』で、おめでとうって言われて退院できると思ってる人が大半なんだよね。でもそ実際はそんなことないし、医者もそう思ってる。だからなにかあると、そのギャップで揉めちゃうんだよね」って。
まぁ、この辺は医療業界の長年の一般へのコミュ障の結果とも思うけど。