完璧な医療と、医療の瑕疵
まぁコメ欄見ると、仕方ないとは言え批判の嵐。それは予想通りなのでいいのだけれど、救外への一般の認識が、おおぉうとなる。そもそも救急外来って「応急処置外来」であって、「高度救急救命外来」ではないんだよね。症状に見合った専門医に当たるとも限らないし、検査も出来ることは限られる。そりゃ、オンコールでスタッフ呼び出して処置やオペすることもあるけど、対症療法で済ませて、日中のスタッフや検査とかの諸々フォロー体制が動き出してから本格的に治療することもある。
この病院云々ではなく、一般論としてだけど、人命が関わるからこそミスが許されないのは分かるし、最もだけれど、そもそも日本の医療に対してあまりに完璧を求められ過ぎるのも事実。
医者含め医療従事者って、結局は国家資格取ってから実技を習得することになるんだよね。学生時代に病院実習あるけど、当たり前なんだけれど対患者で実技練習なんて出来ないわけで。精々が学生同士やスタッフが練習になるくらい。それだって、当然オペや侵襲性の高いものなんかは出来ない。となると、それらの行為は、免許を取ってから本物の患者さんで「練習」するしかない。だから、大学病院とかは「臨床実習やってますよ」的な案内があるのよね。
完璧な医療と、医療の瑕疵
わたしも中堅と言われ久しいけれど、ここ最近は特に「完璧な医療」が求められることが多いなって感じる。そのつもりがなくても、「一回で採血してね」とか「痛くしないでね」とか「楽に検査受けられるようにして」とかは毎日言われるし、それでもういちいちビビる経験年数ではないけれど。
でも、それは当然な気持ちだよね。わたしだって、自分が受ける側ならそういう思う。でも、例えば胃カメラひとつにしても「TVでやってたみたいに意識なくして」とか簡単に言われても、それには個人の病状とか色々制約もあるわけで。あと「海外だと〜」とかも。そりゃ、日本と海外では医療事情も保険制度も違うからねぇ。国内に限っても、施設によりマンパワーや設備も違うしね。「どこそこではこうだったのに!」も、うーん、うちはその「どこそこ」ではないからねぇ、困っちゃうねって。
昔聞いたのは「日本って『お産は安全』で、おめでとうって言われて退院できると思ってる人が大半なんだよね。でもそ実際はそんなことないし、医者もそう思ってる。だからなにかあると、そのギャップで揉めちゃうんだよね」って。
まぁ、この辺は医療業界の長年の一般へのコミュ障の結果とも思うけど。
完璧な医療と、医療の瑕疵
採血とかだと、やっぱり定期的に患者さんから「ご意見」が挙げられる。曰く「一回で取れなかった」とか。うーん。正直、採血に関してはベテランでも百発百中は無理だし、痛くしないことも無理。針刺すんだから。痛くないのはたまたま痛点外れたからってだけで。
でも、当然そんなこと患者さんには関係ないし、やっぱり「ほぼ」100パー成功で当たり前なのも確か。なので、新人には「失敗するのは仕方ない。ベテランがやっても失敗することはある。でも、それが『当たり前』という態度を患者さんの前では絶対取るな。卑屈になる必要はないけれど、失敗しても二回目のチャンスを貰える態度を取れ」とはもう毎年毎年言っている。きちんと対応できていれば、ほとんどの患者さんはちゃんと二回目のチャンスをくれる人ばかり。
でも、残念ながらときにはモンペみたいな人もいる。一事が万事いちゃもんをつけてくるし、威圧的だったりする。採血とか検査怖いの裏返しの人もいるけど。正直、それ若手にやると
萎縮して失敗→クレーム→若手が自信なくして出来ることが出来なくなる→最悪辞める
の負のスパイラル。もちろん、若手の頃は上の人間が変わるけどね。それもいずれは自分でやらなきゃいけないわけで。現実を見せるのと若手の心を守るって両立がここ数年は難しいなって。