夢の中のお話 3月17日
「やっぱり、危険な成分が入っているんだな。」
「違うわよ、これは雪山付近に生息するスノーワスプが集めた雪中花の蜜です。」
雪の中に咲く花の総称が雪中花だ。寒い場所で鮮やかに咲き、その蜜は高級品とされる。
「これが雪中花のみで作られた蜂蜜です。これ1つで、1か月は暮らせますよ。」
さんごが雪中花の蜂蜜をヴァーニスに手渡す。
「これを、他の蜂蜜に混ぜてお見せに置いておいたんですが、あっという間に売れましたね。」
「人気商品だったんだな。」
瓶をまじまじと見つめるヴァーニス。
「ええ、これをしっかり買っていったのがギギガルさんですよ。」
「それと、約束を守るって言うのが結びつかないんだけど。」
「ギギガルさんは女の子ですからね。甘いものが好きなんでしょう。」
さんごの言葉に、2人は驚きの表情を見せる。
「さんご、蟻人族の性別の見分けがつくの?!」
レイナが驚くことも無理はない。蟻人族は見た目がほぼ同じで、服も同じようなものを着ている為、性別はおろか個体判別も難しい。
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夢の中のお話 3月9日
「そうだな。まあ、明日で依頼は終わるが、間違いなく追加依頼をしてくるだろうな。」
ヴァーニスがさんごの行動を予測する。この数日間の付き合いだが、彼女の行ってきそうな事は判ってきた。
「商人に、良い様に使われ続けるって言うのも、なんだか嫌な感じよね。」
「その分、報酬はいいからな。そこは割り切るしかないだろう。」
「難しい事は、もうヴァーニスに任せるわ。」
レイナは苦笑いしながら寝転がる。
「そう言えば、さっきはさんごとはあまり話してなかったね。」
「私が話すと、色々とぼろが出ちゃうかもしれないしね。」
「うん、判ってるよ。」
「そこは、フォローしてほしかったなぁ。」
「今更だよね。」
ヴァーニスの答えに、返す言葉が無いレイナ。
「まあ、とにかく今日は休もう。この流れで行くと、明日は大変なことになりそうだからな。」
「そうね、私も大変なことになりそうって想像は付くわ。」
「お手柔らかに頼みたいところだね。」
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夢の中のお話 2月11日
「動く事は無いと思うが・・・溶けないスライムコアは珍しいな。」
「溶かさないスライム自体が、珍しいものね。」
基本的に、スライムは酸性の体内に獲物を取り込み、溶かして栄養にしている。
それが溶かせないとなると、このスライムはどうやって栄養を取っていたのか・・・。
「生態が気になるが、今は先に進もう。」
「そうね。」
ヴァーニスが広間の残骸に向けて氷魔法を放ち、地面を固める。
そうして作った橋を渡り、そのまま11層へと向かった。
「・・・凄まじく狭いな。」
ヴァーニスが第一印象を述べる。通路はあるのだが、2人の身長ではかがまないと進めない。
「ポーラルなら、ギリギリ歩ける高さね。」
自然にできたダンジョンで、狭いダンジョンというのは結構ある。
内部では思うように武器が使えず、襲われた際に逃げるのにも苦労する。
さながら、大自然のトラップだ。
こういう時に、冒険者がとる手段はいくつかある。
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夢の中のお話 2月10日
「応援されてる以上、目標はしっかり達成しないとね。」
レイナがヴァーニスの背中を叩く。その行為に、ヴァーニスは軽く右手を挙げて答える。
「そうだな。それで、中の様子はどうなってるんだ?」
「そろそろ落ち着いてきたと思うわ。」
氷の壁に手を当て、中の様子を探る。
「生命反応はなさそう。ヴァーニス、壁の解除するわよ。」
「ああ、いつでもいいぞ。」
ヴァーニスは、自分とレイナの周囲に風の膜を張る。
「さて、スライム達はどうなったかしら。」
氷の壁を破壊し、大広間を直接観察する。
大広間の中央に、スライムの残骸である液体が波打っている。
その中には、ボロボロになった球体が沈んでいる。これが、スライムコアだろう。
「このコア、溶けてないわね。」
スライムコアの表面は、スライムの体液では溶けないようになっている。ただし、表面にひびが入ってしまうと、そこから溶けてしまう。
これが溶けていないという事は、この液体は酸ではないという事だ。
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