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シーラン・ジェイ・ジャオ『鋼鉄紅女』ハヤカワ文庫、読了。
巨大ロボットと中華文化の融合だが、あとがきで言及がある通り手本としたロボットアニメがあるようで、日本のロボットアニメやSFものに馴染みがあるとロボット方面の設定自体は目新しくはない。
主人公が受ける性差別がすさまじい。ロボットSFというよりは、その差別を打倒し力を取り戻す過程を描いた物語だった。面白く読んだが、ちょっとモヤモヤもする。そのモヤモヤを書こうと思う。
虐げられ売られた娘が、実は人類最強と言われるパイロットすら凌駕する力を持っていた、という展開は痛快だ。彼女が生まれ育ったのは辺境の貧村。纏足のために祖母に足の骨を砕かれ、痛みと膿みに一生苦労しなければならない体で、暴力をふるう父と、怯えながら波風立てぬように忍耐ばかりする母、男性の特権を当然のように享受する男兄弟。大切な姉はパイロットの気を補充するバッテリー・妾女パイロットとして売られ、人気パイロットの暴力により死ぬ。復讐を誓う主人公。
主人公はこの家族を憎みつつも母や祖母については多少迷いがあった。自分を苦しめたとは言え同じ虐げられる側の性。しかし末路は……。

上の世代の女性らは、確かに男性に迎合することでこの男性優位の仕組みの温存に加担していると言えるかもしれない。許せない気持ちもある。しかし彼女達の被害も無視してよいのか。
短い時間で猛烈に突っ走る主人公には、立ち止まって考える場面が殆ど無い。それだけの怒り。決して愚かではなく、戦う力も知恵もあるが、慎重に振る舞うこと、立ち止まることはなかなかできない。故に生き残れたのだし、俯瞰した視野で考えるのに必要な“教育“を受ける機会もないままに生きてきた。戦いの人生。そのしっぺ返しをこれから受けるのではないか。
過酷な境遇で痛め付けられたゆえに、過剰なまでに攻撃(反撃)したくなるのはとても分かる。それゆえの危うさを感じながら読み進めた。
最後のオチは何となく予期していたもので「よしよし、キタキタ」と思ったが、物語はブツリと終わる。ちらほら存在を匂わせる神のごとき存在についてもまだ不明瞭だ。続編の予定があるそう。主人公の成長が見られるだろうか。そればかりでなく、よりSF的な話運びを期待できるのか――今のところ可能性半々くらいに見てしまってるが――しばらく待ちたいと思う。

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