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職場読書会『右脳精神療法』後半終了。エビデンスが示されないよねと一部の臨床家以外に認められにくかった精神分析が、神経生物学的にデュマをはじめとするハイパースキャニングを用いる研究社たちにより裏打ちされて復権したこと。そして精神分析は一者から二者へ、解釈からコミュニケーション、治療者が何をするか、何を言うか、から、どのように患者と共にいるか、ということに関心をシフトしなければならないと。また発達神経科学、現代のアタッチメント理論にもふれ、胎生期から生後1年に至る右脳の優位性、その時期の子どもと養育者の二者関係は子どもの脳の発達と行動に直接かつ永続的な影響を与えることを明らかにしてきたと述べる。そしてその時期に養育者に脅されたりネグレクトされたりすると、脳細胞の過剰な死、シナプスの破壊につながると。……知ってました。でも脳細胞レベルでこう述べられるとショックを受けるよねと、弊社女子社員たちと共有した。
また、解離は右脳ー右脳コミュニケーションを通して解消されるので、主に左脳による思考ベースの戦略を用いて右脳とその情動を制御しようとする認知療法は、解離を強化するので、解離の治療には役に立たないと、結構バッサリ書いてあってこれも面白かった。
さらに、現在の社会情勢にもふれているところが秀逸であった。

権力は左脳の管轄で、道徳は右脳の管轄なのだけれど、現在の社会情勢では、左半球が右半球よりも優先され続けていて、悲惨な結果を招く可能性があると。現在のリーダーシップは右半球の共同福祉を犠牲にするか無視するかしていると。……ほんとにそうだと思うし、国会観てても、権力に対して道徳の話をしても通じないし、共同福祉や文化の話をしてもす通りされるだけっていうのがすごく納得いった。左脳の権力に対して右脳の情動の話をしても、そりゃ通じないわね。
さて私たちはどうしてゆけばよいのか。右脳ー右脳コミュニケーションによってしか解離された体験は統合されない。何を言うか、何をするか、ではなく、どのように共にいるか。これは、ゆっくりと時間をかけたプロセスなので、今の日本の貧困で忙しない日常においてはとても贅沢なことだし、結局左脳による支配のほうが手っ取り早いから、カルトが台頭するのでしょう。カルトは単純で簡単だからあっという間に広がる。それでも、右脳ー右脳コミュニケーション、共にいること。それらそのものを、立ち止まってじっくりと体験することの大切さを再考させてくれた良書でした。何度も読み返したい本です。

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