ヨナスの思想を解説する記事。
ちょうどヨナス『責任という原理』に(浅学ながら)とりかかっていたので、この記事は自分にとってタイムリー。インタビューイの戸谷洋志氏には著書『未来倫理』があり、そこに言及していないのは控えめだなと思ったりしました。
digital.asahi.com/articles/ASR

18世紀のカント倫理学は、現代の「平和と人権」の基礎になった。しかしながら20世紀以降の巨大な悲劇——戦争被害の飛躍的増加、ジェノサイド、核兵器、公害、原発事故、気候危機——をうまく考えられる哲学は、いまだに整備されていない。例えばハイデガーは「現代の事象をわれわれは思考できていない」という所までを指摘した。現代の悲劇、未来への責任に哲学者として取り組んだのがヨナス。

記事より。
"(ヨナスが考える)責任(レスポンシビリティー)とは、対象の呼びかけ(コール)があって、それに応答(レスポンス)する責務のことです。ヨナスは、まず善きものからの呼びかけがあり、「この呼びかけの声が万人を拘束するものとして研ぎすまされると、それが道徳法則となる」(主著「責任という原理」)と考えました。"

"放射性廃棄物の最終処分場の議論が注目されていますね。10万年後の未来まで視野にいれた想像力が要求されます。(続く

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"私たちがいま選択した事態は、日本という国すら無くなっているかもしれない未来の人々に深刻な影響を与えるかもしれない。そうした未来に対して責任があると言うためには、もっと根源的なところから責任を説明しないと現実的な思想にならないとヨナスは考えました。"

そしてヨナスは、未来について思考するにはSF(サイエンス・フィクション)の想像力も必要だということを言っている。例としてハクスリー『すばらしい新世界』を挙げている。

テクノ楽観主義に言わせれば、「未来を心配するな。テクノロジーの進化がすべてを解決する」ということになるのだけど、このような言説は20世紀以降の巨大な問題がテクノロジーの進化に伴って出てきたことへの「故意の無知」といえる。私たちは、未来への責任を考える思考の枠組みと言葉が必要だ。つまりテクノロジーの進化に対応した新しい哲学、倫理学が必要だ。

参考文献
ハンス・ヨナス、『責任という原理——科学技術文明のための倫理学の試み』、東信堂、2000年

補足として

参考文献(続き
戸谷洋志、『原子力の哲学』、集英社e新書、2021年
戸谷洋志、『未来倫理』、集英社e新書、2023年

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