Fredericq(1885年)「生き物とは、各々の不安な影響がそれ自身により、不安を中和ないし修復する代償行動を呼び起こすような種類のエージェンシーである。生き物の階梯が高度になればなるほど、ますますこれらの調整エージェンシーは数が多くなり、完全になり、そして複雑になる。それらは生命体を、環境で起きる望ましくない影響と変化から完全に解放する傾向がある」
Richet(1900年)「明らかに矛盾しているが、生き物がその安定性を維持するのはただ、興奮しやすく、外的刺激に従って自身を修正して刺激に対し反応を調整できる時のみである。ある意味で生き物は、修正可能だからこそ安定している——わずかな不安定性が、生命体の真の安定性の必要条件なのだ」p.399.
「これらの一般的なアイデアに、より精密な分析を最初に与えた栄誉は、クロード・ベルナール(1878)に属する。彼は、複雑な組織を有する動物においては、生ける部分がそれを浸す液体の中に、すなわち血液とリンパ液の中に存し、その液体が ”milieu interne” ないし”intérieur”——内部環境、あるいは我々が体の液質(fluid matrix)と呼ぶものを構成している、と指摘した。この液質は生命体自身により作られ、制御される。そして生命体がより独立して、外部世界の変動から自由になるにつれ、外部環境のシフトにもかかわらず自身の内部世界を画一に保つことによってそうするのである」p.400.
ベルナール引用文「自由で独立した生命の条件は、『内部環境』の固定性である。あらゆる生命メカニズムは、それらがどんなに様々であろうと、ただ1つの目的、内部環境における生存条件を恒常的に保つという目的を持っている」p.400.
(承前)「6. 『ある因子が、ホメオスタティックな状態をある方向にシフトさせることが知られている時、その因子の自動制御や、拮抗作用を持つ因子・諸因子を探すことは理にかなっている』…ホメオスタシスは偶然のものではなく、組織化された支配の結果である… …高等動物におけるホメオスタシスの調節はおそらく、数えきれない進化的形質の結果であり、最終的に獲得された恒常性の知識は、下等動物で作用しているより効果的でない調整や、また、社会・経済組織で恒常性を保証しようとする試みとの関連で、示唆的である。…まさしく、生命体における調節は生理学の中心問題である」p.427.