読書備忘録『砂の女』
*新潮文庫(1981)
*安部公房(著)
二〇数箇国語に翻訳された『砂の女』は、不条理の表現者安部公房の名を世界文学史に刻み付けた不朽の名作。このたび数年ぶりに読み返したのだが、閉鎖的な砂の世界に立ち込める圧倒的な虚無に新鮮な感動を覚えた。主人公は仁木順平という教師。彼は歪な夫婦関係と憂鬱な教職に辟易し、空虚な日常から逃れ、昆虫採集に没頭するため休暇を利用して海岸沿いの部落を訪れる。ところが男は砂穴の底にある民家に閉じ込められて、住人の寡婦と砂掻きをさせられることになる。ここから始まる男の悪戦苦闘は壮絶である。脱出を阻む砂丘は蟻地獄を連想させる。砂はまるで生きもののように蠢き、部落を飲み込む勢いで休まず流動する。愛郷精神を旨とする住民は監視を怠らず、同居している寡婦は居場所を守るため男を引きとめる。友好的な態度を崩さないまま核心には触れさせない狡猾な住民たちは不気味極まりなく、脅迫めいた言動をしてもいないのに強固な抑止力を働かせる。そして、部落にも男にも従順な寡婦は逃走を妨げる蟻地獄の主であり、砂穴での監禁生活を日常に変えていく存在として象徴的に描かれる。
宇崎ちゃんと遊びたい! | 春菊天うどん #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/84562097
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noteで連載中のクトゥルー神話異世界小説「拷問人の息子」を電書化しました。邪教の世界を舞台とした呪術ハードボイルドノベルです。
拷問人の息子を電書出版しました|Morihiro Matsushiro @m_m1941 #note https://note.com/mm1941/n/nf4ef4613ab92
めも。
出版物の総額表示、書協「返品」「回収」問題を否定|日販通信
note https://note.com/nippan_tsushin/n/n0d7cbc6300cd
読書備忘録『オーバーストーリー』
*新潮社(2019)
*リチャード・パワーズ(著)
*木原善彦(訳)
木が酸素を排出しなければ人間は生きていけない。すなわち人間は木に生かされているといえる。ところが人間は日常生活を充実させる方法として森林を材料に変える道を選択した。自然保護を唱えるのは容易だが、木材のない生活を想像することは非常に難しい。それだけに環境問題に踏み込み、生命の源たる森林を象徴的に表現した『オーバーストーリー』はなおさら胸に迫った。本作品は群像劇の形式で書かれている。家庭環境も性格もまったく異なる九人の主役。けれども主役たちは何らかのかたちで木との関わりを持っており、その記憶と絶滅の危機に瀕するアメリカ大陸最後の原始林が呼応するように、森林伐採という難題に向かっていく。栗の木を写真におさめてきた一族の末裔、ベンガルボダイジュに命を救われた帰還兵、感電死するも光の精霊の導きで息を吹き返した女子大生、聴覚障碍を抱えながら植物研究に従事する学者など。それぞれの物語は成長する大木の枝葉のように広がり、複雑に絡まり合っていく。その様相は森林の息吹を具現化しているようで感動的だ。
山田太郎議員は先ほど詳しくTweetされていた。
https://twitter.com/yamadataro43/status/1306477529360789505
赤松健氏もこの話題に触れておられた。
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1306428738939232256
山田太郎議員の動画を視聴。総額表示義務には罰則がないのか。初めて知った。カバー及びスリップを変えなくても財務省は動きそうになく、既刊本の価格表示は現状維持で潜り抜けられるかも知れない。出版業界からの要請もないし、書店に負担をかける意向もない模様。
非常に悩ましいのは「下手に騒ぐと厳格化を招き兼ねない」点で、既刊本を生き残らせるには価格表示をグレーゾーンと認識しなければならないこと。また2021年4月1日以降の出版物が総額表示となる以上、次の税率変更後はグレーゾーン化の逃げ道も失われることが懸念される。そこを踏まえて今後対策を考えいくことになるだろう。
いずれにせよ脊髄反射で山田太郎議員を非難する風潮はいただけない。要請がなければ何もできないし、出版関係者間の意見に齟齬が生じているなら業界団体全体の認識を改めるのが先決。風説に頼るより本人の話を聞く方が確実だから「出版物の総額表示義務化」問題が気になる方には視聴をおすすめする。私のこのTootも主観的なまとめにすぎないから鵜呑みにしたらダメよ。
【第415回】出版物の総額表示の義務化
https://www.youtube.com/watch?v=NNWJ96o3KgE
noteで連載中のクトゥルー神話異世界小説「拷問人の息子」を電書化しました。邪教の世界を舞台とした呪術ハードボイルドノベルです。
拷問人の息子を電書出版しました|Morihiro Matsushiro @m_m1941 #note https://note.com/mm1941/n/nf4ef4613ab92
昭和生まれの文章書き(小説・書評)。筆名はホクトと読みます。掌編の共著数冊。怪奇幻想小説をよく書きます。その実体は重度の二次元オタクなのでご注意を。noteでは掌編小説・短編小説・読書備忘録・雑記等を公開。競馬と野球とVtuberと『艦隊これくしょん』と『マリオカート 8 DX』が好き。
*BTは宣伝に限定(R18の場合NSFW済みのもの)。
*エアリプライ非対応。
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*変態的発言あります。