近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』
フェミニズム・クィアの視点からの鋭いゲーム批評であり、本書を読むことでゲーム体験への様々な可能性も広がる、ものすごく前向きな気持ちになれたエッセイでした。
ゲームとはプレイヤーがルールとやり取りをして主体的に物語を作り出すものだからこそ、ゲームのクリアに失敗すること(差別や排除のシステムのためにプレイを断念する意味です)は、それ自体がプレイヤーにとってのエンディングの一つであり物語となりえると示した上での、「それは世界を覆う規範や差別へのささやかな抵抗でもある。」という近藤さんのメッセージ、多くの人に伝わってほしい。
ゲーム作品ごとのエッセイとは別に章ごとのコラムがあり、ゲーム内で再現されるレイシズムに反して語られないセクシズムについて、ゲームと能力主義への疑問、ゲームにおける障害の描写やアクセシビリティのこと、オープンワールドの排除の仕組みについてなど、これらの論考ひとつひとつが素晴らしかった。