「紀伊國屋じんぶん大賞2023」、私が投票したのはこの3冊でした。
◆カイラ・シュラー『ホワイト・フェミニズムを解体する インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史』(飯野由里子 監訳/川副智子 訳)
◆アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』(山田文 訳)
◆森山至貴×能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』(←19位にランクイン)
『ホワイト・フェミニズムを解体する』は、マジョリティ女性の成功や特権の獲得のために周縁に置かれ、抑圧され犠牲となってきたマイノリティ女性による200年間の対抗史という、フェミニズムにおいて知るべき歴史と今考えるべき事柄が詰まりに詰まった濃密な、今年一番衝撃を受けた本でした。
『セックスする権利』は、著者が「必要に応じて不快と葛藤の中にとどまろうと試みた」と言う通り、分かりやすい形での明確な答えを示すものではなく、それどころかある意味でとても居心地の悪いこの一連のエッセイこそとても重要で、かつ面白く、素晴らしい語りだった。
森山至貴×能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』
ジェンダーやセクシュアリティのことで悩んだり、社会規範に対する居心地の悪さを感じているクィアの人たちへ、まず一番にこれを読むと良いよ!とお勧めできる本。
この本を読むと自分のラベルを発見できるとか確信を持つとか、そういうものではないのだけれど、お二人の対話を通して見え方が少し変わったり腹落ちできたり、気持ちが楽になったりするのではないかと思う。
森山至貴×能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』
それと、批判や議論が「行き過ぎ」てしまうという表現は良くない、という話も印象に残った。
「行き過ぎているかじゃなくて、端的に間違っているかを考えるべき。「行き過ぎ」は便利だけど、実際には「事の悪さについてちゃんと考える言葉としては使えない。「程度」の問題ではないのに、手間を惜しんで雑な批判となる。」
そして同じく、「極論」もやめよう、と。
「検討の対象にしないこと、正当性があるような感じにもせず、素朴な偏見をさも後付けで理由があるように見せている「極論」は「論」をまともに取り上げず、「知ったことか」と言い返すことも必要。「一理あるって思われたいんだろうけど、ないからね」と土俵に乗らないこと。」