ルソーの『告白』、当時の性規範的にもややスキャンダラスな面もあり、死後出版の前提で書かれた。
ルソーは1778年に死去するが、第一部は81年、第二部はフランス革命の前年88年に出版。
ところで、ルソーの『社会契約論』は、フランス革命、その後の1871年以降の第三共和政において、国民統合を正当化する「聖典」として普及していくが、『告白』の方は、20世紀前半においても一種の禁書的扱いだった。
R.マルタン・デュ・ガールのー日本でも有名なー『チボー家の人々』の冒頭、主人公ジャックが『告白』を密かに読んでいる所を見つかり、叱責される場面が出てくる。
これには性規範的に、18世紀よりも19世紀の方が「厳格」になり、また女性の地位も低下してWWIに至った背景がある。
サルトル、ボーヴォワール世代は『告白』は勿論、今では仏文の聖典であるボードレールさえも一種の禁書扱いだった。
仏で女性参政権が与えられるのはWWII後。性規範の大衆レベルでの変化は1968年以降である。
従って1949年の『第二の性』が広く読まれるようになったのも68年以降。
ただその際クリステヴァ・イリガライなどの「差異」派によって普遍主義=同化主義派とレッテルを貼られる。
再評価は21世紀に入ってからである。