さて、この手のリーダーシップ論に関する本を読むたびに野球漫画『ONE OUTS』(甲斐谷忍)のライバルチームのことを思い出す。『ONE OUTS』は、二つの点で本書と共振する。
そのチームは、現役最高のプレイヤーをかき集めたチームで、最強になるはずだった。メンバーは最高の個人成績を上げていた。ゆえに、最高の結果=勝利がもたらされるはずだった。
しかし、ひとたび試合が始まれば主人公率いる万年ビリのチームが勝つ。主人公のチームは、主人公のWHY=「勝利のためにメンバーが最高のプレイをする」という価値観を心の底から共有して、個人成績よりも大事な勝利を求めたからだ。
一方のライバルチームには「個人成績を上げる」というWHATは存在したが「勝利のために」というWHYが存在しなかった。WHAT=個人成績は、勝利のためのピースの一つに過ぎなかった。
万年ビリの主人公らが強大なライバルに勝利したまさにその理由が一つ目の共振だ。
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『ONE OUTS』の作者は、明確にいわゆるリーダーシップ論を参照していますよね。心理戦を好んで描くけど、その中でも特にリーダーシップ論を好んでいる。もっと言うと、より広がりを持つ価値観を打ち出せたリーダーが勝つ漫画を描いていますよね。
作者、甲斐谷忍はむしろ『LIAR GAME』の作者として有名ですが、あの主人公もまた明確にWHY=悪徳マルチへの復讐、ひいては悪徳そのものへの復讐がありましたよね。
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だが、ライバルチームはやがて一つの価値観――「打倒主人公」という価値観を共有し、主人公を追い詰める。ライバルのうちの一人が独りで、個人成績を越えて「打倒主人公」のために動き出したからだ。その背中がチームのメンバーたちを価値観を共有する仲間たちへと昇華させる。
隗より始めよ――WHYを示すためには、まずその人間が一歩を踏み出さねばならない。それが本書との二つ目の共振だ。