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『説明組み立て図鑑』(犬塚壮志)

あなたは「結論ファースト」一本槍で説明していませんか? 本書は一般的に説明に有効と言われている「結論ファースト」で上手くいかない大人のために書かれています。「結論ファースト」が上手くいかない理由は、二つあります。
一つ目は、人は「結論=ファクト」だけで動くようにできていないからです。むしろ、ファクトが先に出されることで反感を覚えることすらあります。説明を本当に届けるためには、相手の「感情」にフォーカスする必要があります。本書は、長年にわたって駿台予備校で「説明」してきた筆者が認知科学に基づいて相手の「感情」を動かすための型を解説します。計80の型が収録されていますが、本当に大切なのは、相手の「感情」に焦点を当てることともう一つだけです。
そのもう一つとは、相手を「知る」ことです。「結論ファースト」が上手くいかない理由と重なりますが、客観的なファクトは客観的であるがゆえに動かしようがなく、相手の「感情」に合わせてチューニングできないのです。そして、相手の「感情」に訴えるためには、相手を「知る」必要があります。つまり、相手を「知る」ための事前準備をどれだけ深く行えるかが説明の成否を決めるのです。
説明の究極的なコツとはこの二つだけなのです。

私は仕事柄、開発者から上は役員にまで「説明」をすることが多いのですが、イマイチ相手に刺さっていないと体感することも多くありました。本書を読んで、その原因の一端が掴めたように感じます。
私は受け手の「感情」に訴える=受け手の立場になって考える習慣が足りていなかったんだと思います。孫子も「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言うように「相手ファースト」なのです。
本書は一見すると80もの覚えきれないほどの説明の型を解説する本に見えるのですが、読み込んでいくと、説明の真髄とはたった二つ。
受け手の「感情」に訴え、そのために受け手を「知る」ことだけなのです。

私は本書をただビジネスのためだけに読んだのではありません。本書のウラにある認知科学とそれに基づいたオモテの説明方法とは、私が求める別の技術にも転用できるのです。
それは小説の「台詞」の書き方です。ともすれば理屈っぽく過剰になりがちな「台詞」ですが、本書の技術を用いることで、説明くさくない=読書の感情に訴えるものへと昇華させることができると信じるところであります。実作において本書の技術を転用するのがとても楽しみです。

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