“ 「政治家にとって観光振興は重要な票田で、自治体が政策をスローダウンさせるのは難しいようです。しかし本来は、地域ごとの実情を見極めてそれぞれに合った振興策を考え、調整するのが政治の仕事のはずです。どこも一緒くたに観光地として自立しろと迫るのは、政治が自らの役割を放棄しているも同然です」
「そもそも地方の疲弊は、政府の経済政策のまずさに起因しています。先進各国では地域経済に安定成長や雇用をもたらした製造業が衰退し、地域の基幹産業は観光に代表されるサービス業へシフトしました。政府は製造業に代わる安定した成長産業が見つけられていないがゆえ、観光による経済振興にこだわるのでしょう」
「より大きな問題は、資本主義の行き詰まりや経済構造の変化に対応した税制改革や再分配が必要なのに、それが十分にできていないことなのです。その大元を手当てせず、失政の穴埋めを地方に押しつけるのはおかしい。それにサービス中心の資本主義経済は、地方よりも大都市がはるかに有利だと考えられています。地方経済をサービス業である観光で再生・維持しようとするのはかなり無理があります」”