良い記事だった。
“「(…)成功しているのは東京などの大都市ばかりです。観光で稼げと地域に無理な競争をさせ、疲弊させているのは統計上も明らかなんです」
「(…)地方で観光が新たな有望な雇用機会になったり、稼げる基幹産業になったりしている地域はほぼありません。観光は雇用を生むとさかんに喧伝(けんでん)されますが、現実はそうなっていません。特に地方では観光関連で雇用の非正規化が進み、離職率も高くなっています」”
“ 「観光労働の厳しさ、あるいは空しさは若い人たちを中心に知られつつあり、観光業界の人手不足は悪化しています。外国人労働者の奪い合いも始まっており、観光そのものの持続可能性も疑わしくなりつつある(…)」
「(…)観光産業は接客サービスなど人間にしかできない仕事を中心に成り立っているため、生産性を上げにくく、賃金も上がりにくいという構造的宿命を抱えているからです。観光産業にはそもそも、稼ぎにくいという特性があります。とりわけ地方の中小規模の観光産業では、人口減少で地域の労働力自体が足りていないので、仮に賃金を上げても人手が集まるとは期待しにくいようです。けっして日本の観光産業のレベルが低いわけではなく、そもそも改善しようにも難しいのです。(…)」”
“ 「政治家にとって観光振興は重要な票田で、自治体が政策をスローダウンさせるのは難しいようです。しかし本来は、地域ごとの実情を見極めてそれぞれに合った振興策を考え、調整するのが政治の仕事のはずです。どこも一緒くたに観光地として自立しろと迫るのは、政治が自らの役割を放棄しているも同然です」
「そもそも地方の疲弊は、政府の経済政策のまずさに起因しています。先進各国では地域経済に安定成長や雇用をもたらした製造業が衰退し、地域の基幹産業は観光に代表されるサービス業へシフトしました。政府は製造業に代わる安定した成長産業が見つけられていないがゆえ、観光による経済振興にこだわるのでしょう」
「より大きな問題は、資本主義の行き詰まりや経済構造の変化に対応した税制改革や再分配が必要なのに、それが十分にできていないことなのです。その大元を手当てせず、失政の穴埋めを地方に押しつけるのはおかしい。それにサービス中心の資本主義経済は、地方よりも大都市がはるかに有利だと考えられています。地方経済をサービス業である観光で再生・維持しようとするのはかなり無理があります」”