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最近読んでたウェブ小説はこれ。

星屑ぽんぽん『美少女になったけど、ネトゲ廃人やってます。』
わりと若い女性書き手だろうなーと思って読んだ。

意中の女子に告白しようとしたら緊張のあまりに失便する大惨事が冒頭。そこから「流行りの性転化の現象」で15歳高校男子→10歳美少女になってしまう主人公。TSしたまま新作ネトゲを開始する。そこでリア友に出逢うのだが、しばらくは正体を隠しながら幼女として活動。

漫画版はなろうの20話程度までしか進まず打ち切りになったんだけど、一旦話を締めるために「告白の傷を、ネトゲで友達との交遊で回復」にしてるのがリアルティーンズっぽいセンス。
ただ、「面倒見のいいショップ店員」がムキムキのオネエというのが微妙だった。

(画像はコミカライズ第1巻刊行時のやつ)

性転化で変貌したことを姉に伝える、友達に伝える、告発相手に知られる、学校で公表する、などの段取りにやけに力を入れてる。

若さを生かした書き手は、書籍化・漫画化しても、あんまり支持を受けずに打ち切りになりやすい(マーケットのせいもあるし、編集者相当の人がいないせいもある)。

あんまり小説うまくないんだけど、じゃあタラタラとテンプレから作ってる中年が「うまい」のかというとそれも微妙なので、技術的に大差ないやろという判定。

若さは、だいたい学園内の書き方で出る。たとえば、学園内の集団秩序によるストレスの書き方のヴィヴィッドさで判別できる。中年が書くと、男女問わず、それらがごっそり抜けてなんかエロゲやラノベの手順みたいになる。

この作品、途中から結構面白くなってる。

ゲーム世界が現実に侵食してきて、ゲーム内の宗教が歴史上のキリスト教を上書きし始め、それを変化として気づける人は、加工の少ないプレイヤーアバター運用をしている人間だけだという展開になっていく。

つまりチェンソーマンマキマの世界改変陰謀論要素に近いものを使っている。

ここでその作中の宗教が「虹色の女神」なので虹色が世界を混乱させる陰謀論的な存在に配される点でLGBTQの浸透への嫌悪や疑念の土壌とも解釈できるが、同時に主人公はそれにより新たな楽しさにも目覚めているために両義性を備えている。この両義性をキープできるかどうかが問われる感じ。

飛ばして後半読んでみたけど、変容した日本社会で日本皇軍学校とかが生まれてそこに編入させられるとか皇族と婚約させられそうになるとか、不気味な展開として扱われているのもうまい。「右傾化する社会の中での違和感」を混ぜてきたんだな。

アバターいじってない主人公と姉、リア友たちが「変容する世界の中で数少ない、『気づいている側』」ポジションになるので、捻った転生戦士モチーフにも見える。
つまり、かつての転生戦士の中にも、現実世界に対して別の原理原則で相対化するマイノリティミームの破片ぐらいなら混ざっていたんだろうと再考させられる。

なろうハーメルンカクヨムのゲーム世界ものや現実世界にダンジョン出現するやつは、韓国ウェブトゥーン作品も含めて、「秩序変容への不安さ」を焦点に当てないので、今作はわりとレアな試みだな。

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