東家孝太郎「入れ札」(菊池寛原作)
これも先月だったかに木馬亭で聴いたばかりだったけど、やはりじっくり聴けてよさがきわだった。あの地の底から湧いてくるようなダミ声はすごいよなあ。のどが痛くならないんだろうか。今回はとくに、忠治と離れることになる老いた侠客の悲哀と、そのふたりを秋の野原の風が吹きすぎていくラストの場面がなるほど文学的で切なく心に残った。
澤雪絵「大つごもり」(樋口一葉原作)
今日がネタ下ろし。緊張されていると話し、客席も何となく張り詰めた感じで聴き入った。拍手のしどころもよくわからなくて、結局最後まで入らないまま皆でしーんと耳を傾けた。ところどころ言葉に詰まったり噛んだりするところもあったけど、娘の揺れ動く心情がひしひしと伝わってきてとてもよかったと思う。終わったあとに、ほっとして「ようやく終わった」と漏らしていたのが印象的。最後に、演歌歌手としても活動している方なので、持ち歌の「風の演歌節」を三味線の生演奏付きでワンコーラスのサービス。