(つづき)
権太楼「幾代餅」
とてもとてもよかった。マクラで「同じ幾代餅をやっても、さん喬さんがやると人情噺になって、あたしがやると爆笑噺になる」なんておっしゃっていたけど、爆笑の前段があるからこそ、清蔵が幾代に真実を打ち明け、真心がほとばしり出るところの対比に胸をつかれる。ここは泣けたなー。ご病気だった影響を感じさせない。
市馬「竹の水仙」
竹の水仙というと喬太郎師でしか聴いたことがなかった。市馬師の竹の水仙は、亭主がなんとものんきでいい人。楽しかった。
さん喬「唐茄子屋政談」
記録を調べてみたら、なんと14年ぶり。鈴本でかけたと聞いたときには遭遇できずに残念だったけど、ここで聴けるとは。土壇場でチケット取ってよかった。この噺はかなり大勢の人が出てくるから演じ分けが大変そう。でも少しの出番の人でも人物像がありありと浮かんでくるからさすがだなあ。吉原田んぼで売り声の練習をしつつ昔を思い出すくだり。花魁との楽しい日々から自らを懸命に引き戻すように振り絞る「唐茄子や、唐茄子!」の声。甘えが抜けず、八百屋の叔父に怒鳴られていた徳三郎が(ここの場面も痺れる)、最後に「お前は何だ」と聞かれたときの、「俺は……八百屋だっ!」の魂の叫び。大好きな場面。蔵前で唐茄子をあらかた売ってくれたあの兄ぃもいいよね。大満足。