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特別企画 藤原辰史「切なさの歴史学」中編
web.sekaishisosha.jp/posts/289

 “私が、このように日本の負の歴史に関心を持つのは、負の歴史のリストを並べ立てて、歴史反省国家を演出し、満足するためではありません。全身全霊をかけて負の歴史に向き合うと、いま大学や企業が宣伝で垂れ流す「明るい未来」がものすごく陳腐なものに見えてきます。逆にいえば、今はたとえ実現しなくとも、理想の社会とは何かを考えておくと、どんな勉強でも楽しくなります。歴史学もそうです。なぜなら、過去には「選んではならないこと」と「選んだらよかったかもしれないこと」があふれているからです。”

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 “野添さんが捉えたのは再入植制度です。満洲、外地から戻ってきたけれども、すでに日本にその人たちの土地はないんです。なぜかというと、「満洲に渡る人は、土地を全部現地の人に残しなさい。現地の人は土地が2倍になって、その分稼げるから、そのお金によって今の経済不況を乗り越えなさい。満洲に渡った人は、日本とは比べものにならないほどの土地がもらえるから、もっと素晴らしい生活が待っていますよ」――そういう風に誘惑して、日本の満洲移民政策は行われたもんですから、帰ってきても場所がないんです。

 じゃあ、どうするかというと、その当時政府がやっていた再入植制度に応募して、さらに違った場所へと飛ばされるわけです。下北半島の六ヶ所村、のちに成田空港が建設される三里塚、オウム真理教がサティアンを築いていた上九一色村、それらはすべて再入植先です。”

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“これだけで分かりますよね。日本の近代というものはいったい何なのか。つまり、野添さんの言い方をすると常に「棄民をしてきた」、民を捨ててきた。そして、捨てていく場所すべてが、日本近代の病理が凝縮しているようなところになっている。”

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