梨木香歩の名前を見たので。『丹生都比売』の、葬列を凝視する鬼。母が向き合う鬼、を窺い知る子ども。好きな作品とは言いがたいが、印象的な話。

「哀しくも美しい話」と言い表されることが多く感じるが、「哀しくも美しい話」とだけ受け取れる作品でもない。読者である私の方にわだかまりがある。

「朝倉山の上に、鬼有りて、大笠を着て、喪の儀(よそほひ)を、臨み見る」

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 “不吉な不安が秋風とともに人びとの心をかすめるような夕ぐれ、遺骸を運ぶ喪の列を、深々とした大笠の下からじっと見ていた鬼がいたというのは、まことに深い、静かなおそろしさを感じさせる。そして、この鬼の深い沈黙と凝視をおそろしいと感ずる心は、とりもなおさず斉明朝の政治そのものへの危惧や疑問、躊躇などであったはずである。”

鬼の研究 馬場 あき子 chikumashobo.co.jp/product/978

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